本研究ではモデル緑藻クラミドモナスを用いて、オートファジー因子とは異なる新奇な細胞生存を制御する分子機構の解明を目指した。N・S・Pのいずれの栄養欠乏条件においても生存性が親株よりも早期に低下する変異体21B1変異株の解析を進めた。この変異体ではタンパク質リン酸化酵素遺伝子21B1に挿入変異を持つ。野生型との交配により得られた21B1遺伝子に変異をもつ子孫系統の表現型は、元の21B1変異株と同等であった。このことから、21B1変異株における生存率低下の表現型は21B1遺伝子への変異によるものであることが示唆された。21B1遺伝子に蛍光タンパク質Venus遺伝子およびFLAGタグを連結したプラスミドを構築し、21B1遺伝子の単独変異体に導入したところ、表現型の回復とともにFLAG抗体を用いたウェスタン解析において予想サイズにシグナルが見られた。細胞内のVenus由来蛍光パターンの観察により細胞内局在の推定を進めたところ、収縮胞において特異的なシグナルが見られた。一方で、リン酸化活性に必須と推定されるリジン残基をメチオニン置換した変異型21B1遺伝子を21B1遺伝子の単独変異体に導入した場合には、変異表現型を相補しない結果を得た。さらに、組換え21B1タンパク質を用いたin vitroでのタンパク質リン酸化活性評価を行ったところ、カゼインに対して中性条件でリン酸化活性を示すことがわかった。21B1タンパク質の相互作用因子を探索するために、FLAGタグ融合タンパク質発現系統から抽出した総タンパク質を用いたFLAGタグ抗体ビーズによる免疫沈降を行ったところ、複数の特異的タンパク質シグナルを得ることに成功した。
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