2020年度に実施予定であった【課題Ⅰ】個体レベルの解析に関して、解析予定の多糖類がすべて手に入ったため、2021年度に引き続き実施した。結果、NT5株はアルギン酸、ラミナラン、ペクチン、ペクチン酸、キシランに対して強い資化性、フコイダン、キサンタン、デンプンに対しては弱い資化性を示した。一方、セルロース (カルボキシメチル)、マンナン、キチン (コロイダルキチン) は資化不可能であることが判明した。【課題Ⅱ】遺伝子工学的アプローチによる解析に関して、エキソ型とエンド型の両触媒様式をもつユニークなアルギン酸リアーゼであることが判明したpeg3973に焦点を絞り解析した。Swiss-Modelによる立体構造予測より、peg3973はN末端ドメイン(NTD)とC末端ドメイン(CTD)の2つのドメインが短いヒンジ領域で繋がっていると推測された。そこで、NTDあるいはCTDだけにした変異体を作製・機能解析したところ、CTDを削除したNTD変異体ではエンド型の触媒活性だけを示し、エキソ型の触媒活性が完全に消失すること、対して、NTDを削除したCTD変異体では酵素活性を完全に失うことが判明した。つまり、エキソ/エンド型の両触媒活性をもつpeg3973の酵素特性は、エンド型の触媒活性が基本のNTD(触媒ドメイン)にCTDが協調的に作用することでエキソ型の触媒活性も生じると推測された。研究期間全体を通じて、【課題Ⅰ】については目論見どおり、【課題Ⅱ】については、一部解析できなかった遺伝子もあるが概ね達成できたと考えており、NT5株がもつ優れた多糖類資化能の実証と関連する酵素群の機能同定をすることができた。しかし、【課題Ⅲ】in vitro単糖生産システムの最適化については、酵素活性の測定条件の確立だけに留まっており、今後の大きな課題として残された。
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