研究課題/領域番号 |
20K05837
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牧 正敏 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任教授 (40183610)
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研究分担者 |
高原 照直 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90708059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルシウム / リソソーム / ESCRT / 近接依存性標識法 / ALIX / ALG-2 / 膜損傷 / LC-MS/MS 解析 |
研究実績の概要 |
(I)カルシウム結合タンパク質であるALG-2 の損傷リソソーム動員に関わる因子を探索するため、APEX2近接依存性標識法解析を試みた。APEX2 とV5 タグを融合させたALG-2 (APEX2-V5-ALG-2)を恒常的に発現するHeLa細胞株を樹立し、リソソーム損傷誘発剤L-Leucyl-L-Leucine methyl ester(LLOMe) 処理後、ビオチン標識タンパク質を精製した。LC-MS/MS 解析の結果、ESCRT-ⅠとESCRT-Ⅲのアダプターとして知られるALIX、ESCRT-Ⅲ補助因子として知られるIST1 などのESCRT 装置に関わる因子が複数同定された。 (II)ALIX をノックダウンしたHeLa 細胞ではLLOMe 処理後のALG-2 の損傷リソソーム動員が顕著に抑制された。次に、ALG-2 の損傷リソソーム動員にカルシウムイオンが関与する可能性を考え、HeLa 細胞をカルシウムキレート剤BAPTA-AM で処理した後にLLOMe 処理したところ、コントロール細胞と比べてALG-2 の損傷リソソーム動員が有意に抑制された。これらの結果から、ALG-2 の損傷リソソーム動員にALIX とカルシウムイオンが関与することが示唆された。 (III)ALG-2 ノックアウト細胞を用いてLLOMe 処理後のESCRT-Ⅲ主要サブユニットCHMP4B およびESCRT-Ⅲ補助因子IST1 の局在変化を観察したが、両者ともコントロール細胞と同様に損傷リソソームに動員されることが確認された。しかし、ALG-2 ノックアウト細胞において、LLOMe 処理後のALIX の損傷リソソーム動員がコントロール細胞と比較して抑制されることが見出された。ALG-2 の損傷リソソームにおける機能を解明するためには、今後より詳細な解析を行っていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度(2020年度)の実施計画の中で、[課題2]ALG-2依存的にリソソーム損傷部位に動員される分子の網羅的同定において、ALG-2の近傍蛋白質の探索実験が予定よりも早く進捗し、多数の候補蛋白質が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ALG-2の近傍蛋白質探索実験で得られた多数の候補蛋白質について、損傷リソソームへの動員の確認と、それらの発現の増減がALG-2の損傷リソソーム動員に及ぼす影響、および損傷リソソームの修復機構の制御と損傷リソソームのオートファジーによる分解(リソファジー)の制御に及ぼす影響を解析する。 (1)ALG-2パラログであり、ALG-2とヘテロ二量体を形成するPeflinが損傷リソソーム応答に関与する可能性を検討する。具体的にはPeflinノックアウト細胞とALG-2とPeflinのダブルノックアウト細胞を作出し、リソソーム膜損傷応答を検討する。 (2)ALG-2の近傍蛋白質探索実験で得られた多数の候補蛋白質のGFP融合蛋白質をHeLa細胞に発現し、リソソーム損傷刺激の前後の局在様式を観察し損傷リソソームに動員されるかどうかを検討する。あわせて、市販の抗体が使用可能であれば内在性蛋白質の挙動を観察する。市販の抗体が免疫染色に使用不能な場合、特異抗体を取得する。また、これらの発現抑制あるいは遺伝子ノックアウトがALG-2の損傷リソソーム動員に及ぼす影響とリソソーム損傷応答に及ぼす影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症対応のため当初計画していた学会発表がオンラインになるなど旅費の使用が皆無となったため、消耗品購入に充当したが、残額が生じた。次年度に繰り越して消耗品購入に充当する。
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