研究実績の概要 |
本研究は、夜間特異的に花香成分である揮発性ベンゼノイドを生成するナス科植物ペチュニアに着目し、花における香気成分の生合成、配糖体化による蓄積、細胞内での輸送、大気中への放散がどのように起こっているかを解明することを目的としている。今年度はペチュニアの開花段階別(stage 2, stage4, stage5, 開花0-1日後、開花3-4日後、葉)ならびに昼夜3時間ごと(2:00, 5:00, 8:00, 11:00, 14:00, 17:00, 20:00, 23:00)のサンプリングを行い、花香分析を行った。その結果、開花段階が進むにつれて、また夜間特異的に揮発性ベンゼノイド量が上昇することを確認した。さらに、それぞれのサンプルからRNAを抽出し、計39サンプルのトランスクリプトーム解析を行った。その結果、揮発性ベンゼノイドの生合成遺伝子ならびに、それらを制御している転写因子において、揮発性ベンゼノイドの生成量と正の相関を示す発現パターンが見られた。さらに、これら生合成遺伝子と同様に、開花段階が進むにつれて発現が高まる輸送体候補遺伝子を見出すことができた。今後はこれら輸送体候補遺伝子の機能解析を進める予定である。一方で、ペチュニアと同じナス科植物として知られる野生タバコ(Nicotiana sylvestris)についても、香気成分ならびに香気成分配糖体の代謝物分析を進めており、揮発性ベンゼノイドおよびその配糖体が花弁の花冠部特異的に生成、蓄積していることを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペチュニアの開花段階別および昼夜時間帯別のサンプルにおいて、網羅的トランスクリプトーム解析を実施した。その結果、揮発性ベンゼノイドの生成量と正の相関を示す生合成遺伝子のならびにそれらを制御するマスター転写因子を明らかにすることができた。また、輸送に関わると推定される遺伝子を複数発見することができた。さらに、昨年度ペチュニアから単離した香気成分配糖体化遺伝子(PhUGT85A96, PhUGT85A97, PhUGT85A98)のホモログを、同じナス科植物である野生タバコ(Nicotiana sylvestris)においても見出し、その配糖体化酵素の機能解析を進めている。
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