研究課題/領域番号 |
20K05841
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
湯浅 恵造 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (70363132)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナトリウム利尿ペプチド受容体 / 結合タンパク質 / リガンドー受容体 |
研究実績の概要 |
ナトリウム利尿ペプチド受容体の一つであるNPR-Cは、血中ナトリウム利尿ペプチドのクリアランスに関わることが広く知られているが、他の機能も有することが示されている。また、近年、NPR-C特異的リガンドとしてオステオクリンが同定され、NPR-Cの新たな機能の解明が期待されている。本研究では、NPR-Cの相互作用タンパク質を探索し、その相互作用の生理的意義を明らかにし、NPR-Cの新たな機能解明を目指した。まず、StrepタグNPR-CをHEK293T細胞に遺伝子導入し、StrepプルダウンアッセイによりNPR-Cと相互作用するタンパク質の探索を行った。特異的なバンドを質量分析により解析した結果、グアニンヌクレオチド交換因子の一つであるGEF-H1を同定した。GEF-H1はNPR-Aとは結合を示さず、NPR-Cと特異的に相互作用した。また、NPR-Cは細胞内の約40アミノ酸を介してGEF-H1と相互作用した。次に、リガンド処理による相互作用への影響を調べたところ、ANP、CNP、オステオクリンのいずれのリガンド処理によってもGEF-H1がNPR-Cから解離した。そこで、NPR-Cから解離したGEF-H1の細胞内挙動について検討したところ、オステオクリン処理によってGEF-H1の886番目Serの強いリン酸化が認められた。この886番目Serを含めた周辺配列はリン酸化依存的に結合する14-3-3タンパク質の結合モチーフと一致するため、GEF-H1と14-3-3との相互作用を調べた。その結果、オステオクリン処理によって両タンパク質の相互作用が増強することが明らかになった。さらに、オステオクリン処理によってGST-RhoA G17AとGEF-H1の結合量が増加し、NPR-Cから解離したGEF-H1は活性化状態であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NPR-Cの細胞内ドメイン(約40アミノ酸)と特異的に相互作用するタンパク質としてGEF-H1を同定し、リガンド処理によりその相互作用が解離することを明らかにした。オステオクリン処理によって、GEF-H1の886番目Serの強いリン酸化が認められ、14-3-3タンパク質との相互作用が増強することを明らかにした。加えて、オステオクリン処理によってGST-RhoA G17AとGEF-H1の結合量が増加し、NPR-Cから解離したGEF-H1は活性化状態であることを見出した。これらの研究成果を、責任著者としてBiochem. Biophys. Res. Commun. (2021) 552, 9-16に発表した。また、osteocrin 83-133の51アミノ酸残基だけでなく、そのN末端23アミノ酸(osteocrin 83-105)とC末端26アミノ酸(osteocrin 108-133)によってもGEF-H1の解離が誘導されることを明らかにした。各ペプチドには保存されたアミノ酸配列(F-G-S/I-P-L/M-D-R-L/I-S/G)が存在するため、この9アミノ酸(FGIPMDRIG)のみで効果を示すのか検討したが、GEF-H1の解離は認められなかった。新たな高付加価値ペプチドの創出のために、更なるペプチドを作製し、その効果を検討するとともに、アンタゴニスト作用についても評価する必要性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
GEF-H1以外にNPR-C結合タンパク質(以下、タンパク質X)を同定しており、その相互作用の詳細とともにその相互作用の生理的意義について解析を行う。タンパク質Xは転写因子として機能する可能性が考えられるが、十分な解析が行われておらず、その役割は明らかにされていない。タンパク質Xの転写因子としての機能解析を行うとともに、NPR-Cとの相互作用の生理的意義を明らかにする。また、新たな高付加価値ペプチドの創出のために、更なるペプチドを作製し、その効果(まずは、GEF-H1の解離やGFF-H1の886番目Serのリン酸化を指標とする)を検討するとともに、アンタゴニスト作用についても評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により学会がWeb開催となったため、本年度使用額(特に、旅費)を次年度へ繰り越すことになった。繰越し分を次年度、オープンアクセスジャーナルの掲載料に利用する予定である。
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