我々は、マウス肝前駆細胞と胆管上皮細胞の共培養を行うことで、胆管接続型の肝臓オルガノイド(Hepatobiliary tubular organoid; HBTO)の作製に成功した。肝細胞機能の長期維持が可能であること、組織内の代謝産物輸送の再現などを可能にした。HBTOを用いた肝病態モデル構築のために、マウスの初代星細胞とクッパー細胞をHBTOに導入し、脂肪酸添加による変化を検討した。パルミチン酸およびオレイン酸添加、さらにリポ多糖(LPS)の添加によって、肝細胞への脂肪滴蓄積が観察された。脂肪酸とLPS添加群では炎症性サイトカインTNFaが検出された。さらに、活性化星細胞のマーカーであるaSMA染色を行ったところ、脂肪酸とLPS添加群において星細胞が活性化していることを確認した。また、Clodronate liposomeを添加することでクッパー細胞を除去した後に脂肪酸を添加すると、脂肪酸とLPSによる星細胞の活性化が抑制された。以上のように、星細胞およびクッパー細胞を含むHBTOへの脂肪酸添加によって、クッパー細胞の存在依存的に星細胞の活性化が誘導されることが明らかになった。 また、胆汁うっ滞モデル構築のために、ABCB4KOマウスから得た肝前駆細胞と野生型の胆管細胞を共培養した。野生型肝前駆細胞、ABCB4KO肝前駆細胞、いずれを用いてもHBTO構築は可能であった。初代星細胞とクッパー細胞をHBTOに導入した場合、ABCB4KO肝前駆細胞を含むHBTOにおいて星細胞活性化が促進される傾向が認められた。現在、肝前駆細胞にABCB4KOを用いた場合の星細胞活性化のメカニズムを解析するための検討を行っている。
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