研究課題/領域番号 |
20K05845
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
鈴木 司 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (20714588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | AMPK / DDB1 / ユビキチン化 / DNA修復 |
研究実績の概要 |
E3ユビキチンリガーゼであるCRL4ユビキチンリガーゼ複合体は、構成因子のDDB1が基質認識サブユニットであるDCAFsと結合することで基質のユビキチン化を行う。DDB1は複数種類のDCAFsと結合することで多彩な基質のユビキチン化に関与している。そのため、DDB1とDCAFs との相互作用は重要であるが、その制御機構については不明な点が多い。本研究は、申請者らがこれまでにAMPKの新規基質としてDDB1を見出し、AMPKによって DCAFsのひとつであり、DNA修復に重要なDDB2とDDB1との結合が低下する結果が得られた。本研究を推進することで栄養状態を感知しエネルギー代謝を制御する AMPKが、DDB1を介してCRL4によるユビキチン化修飾をも制御する、AMPKの新しい制御経路の発展につながることが期待できる。これまでに、AMPKがDDB1-DDB2複合体の形成を抑制することでDNA修復にどのような影響を及ぼすか解析を行い、その結果、DDB1のリン酸化模倣変異体が発現した細胞においては紫外線照射によるDNAのシクロブタン型ピリミジンダイマー(CPD)の修復に遅延が認められ、一方、紫外線照射によってAMPKの不活性化を起因としたDDB1のリン酸化の抑制が認められたことから、紫外線照射によるCPD損傷が起きると、AMPKの活性が低下し、DDB1の脱リン酸化が起きることで、DDB1とDDB2の結合が促進し、DNA修復が開始されるモデルが考えられる。また、紫外線照射が無く、AMPKの活性が高い場合は、DDB1はDDB2以外のタンパク質と結合することで、他の機能を発揮することが考えられ、AMPKはDDB1のリン酸化によってDDB1の結合タンパク質の切り替えを行っていることが示唆された。また、この他に、DDB2以外のDCAFsとDDB1との結合解析を行い、DDB2以外のDCAFsにおいてもDDB1のリン酸化によって結合能が低下する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、AMPKによるDDB1のリン酸化修飾がDDB2との結合を解離させる生理学的作用としてDNA修復へ影響を及ぼしていることを実験的に示すことができた。 また、DDB1がDDB2以外のDCAFsとの結合に影響を及ぼすかについては、DCAFsのクローニングが完了し、結合性の解析を順次行うことが出来ていることから、こちらも概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、DCAFsとDDB1との結合性の解析を更に進めることにより、DDB1のリン酸化によって結合が抑制されるDCAFsのグループ分けを行うとともに、結合が抑制されることで生じる生理学的意義について解析を行う予定である。
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