細菌由来ラッソペプチドは、環状中分子(アミノ酸残基20程度)で、代謝されにくい性質(プロテアーゼ耐性)を有し、創薬の標的として研究が行われている。しかし、その生産機構について、まだ多くが未解明であり、実際の応用への展開に関しても検討することが多い。ラッソペプチドが、プロテアーゼ耐性を与えるループ構造を含むコンパクトな三次元立体構造を有しているこれらの成果を基盤に、ラッソペプチドの新たな異宿主生産システムを開発した。本研究はこのシステムを利用し、新しい環状ペプチドを生み出そうとするものである。中分子ペプチドは抗体と低分子の特徴を併せ持つ特性が注目され、医薬への応用が期待される。バクテリアゲノムに環状ペプチド生合成遺伝子は多数分布しているが、二次代謝産物であり通常の培養で生産されることは稀である。本研究は、ゲノム情報に保存されている環状ペプチドの遺伝子クラスターを用いて、新規ペプチドの異宿主生産を行い、その生理活性を明らかにすることを目的とし、本課題によって新たな医薬のシーズとなる新規環状ペプチドを創出する。最終年度は、粘液細菌の遺伝子クラスターのクローニング及び大腸菌の異宿主生産を行った。その結果、新規環状ペプチドを得ることに成功した。その構造に関しては、MS/MSを用いた解析で構造を明らかにした。また生理活性試験を行ったところ、Micrococcus luteusに特異的かつ強力な抗菌活性を示した。また、研究機関全体についても複数のペプチドの異宿主生産に成功しており、各ペプチドに関して論文および学会発表を行った。本研究によって、これまで、難しいとされてきた環状ペプチドの異宿主生産の効率的生産方法が確立された。
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