研究実績の概要 |
これまでに我々は、ヒスチジンが連続した配列を有する複数のタンパク質(ヒスチジン連続タンパク質)がヒト細胞内に効率的に取り込まれる現象を世界に先駆けて発見した。興味深いことに、ヒスチジン連続タンパク質の一部は、細胞内に取り込まれた後に、疾患に関与する挙動(例:細胞毒性)を示す。すなわち、ヒスチジン連続タンパク質は、細胞膜透過能を有した新たな機能性タンパク質ファミリーであると考えられる。そこで本研究では、ヒト血中に含まれる新しいヒスチジン連続タンパク質を探索・同定・機能解析する。これにより、ヒトのヒスチジン連続タンパク質ファミリーの全容を解明するとともに、新たな生命現象の発見に挑戦する。 2020年度における研究では、「ヒト血中に含まれるヒスチジン連続タンパク質を探索すること」を目的として、ヒト血清プールからヒスチジン連続タンパク質を精製した。まず、ヒト血清プールをNi固定化カラムへロードし、ヒスチジン連続タンパク質を結合させた。次いで、異なる濃度のイミダゾール溶液(50, 100, 200, 400, 600, 800, 1000 mM Imidazole)を順次Ni固定化カラムへロードし、ヒスチジン連続性の異なるヒスチジン連続タンパク質画分(計7画分)を得た。さらに、陽・陰イオン交換カラムにて細分化することで、ヒスチジン連続性・表面電荷の異なるヒスチジン連続タンパク質画分(計91画分)を得た。得られたタンパク質画分をFluorescein標識し、ヒト培養細胞株とフローサイトメーターを用いて細胞膜透過率を定量評価した。 その結果、高濃度イミダゾール溶液で溶出されたヒスチジン連続性が高いタンパク質画分(計27画分)において、顕著な細胞膜透過が確認された。現在は、細胞膜透過を示したタンパク質画分をLC-MS/MS質量分析に供し、タンパク質同定を進めている。
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