研究課題/領域番号 |
20K05854
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
清水 文一 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50324695)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗酸化物質 / 酸化ストレス / 脂質酸化物 / 核酸酸化物 / スコポレチン / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
本研究は、植物が生産する抗酸化物質の生理機能の詳細を調べるため、種々の酸化ストレスに暴露された植物体内に生じる生体分子の酸化物を分析した。特に、抗酸化物質としてクマリン化合物の一つであるスコポレチンおよびその配糖体スコポリンに着目した。それらの生合成能を欠損したシロイヌナズナ株(f6'h1株:生合成鍵酵素AtF6'H1遺伝子欠損株)と野生株(WT)を比較することにより、抗酸化活性によって保護される生体成分の特定を目指した。2020年度より申請研究を開始、初年度には1)脂質酸化物の定量法の確立および2)酸化タンパク質の検索、および3)核酸酸化物の定量法の確立を進めた。これらの成果を踏まえ、種々のストレスを与えることによって生じた生体酸化物を定量した。 a)除草剤プリグロックス(有効成分:パラコートとジクワット処理:いずれも光合成系Iに作用し、スーパーオキシドアニオンラジカルを細胞内に発生させる)処理。2万~8万倍希釈物を葉面処理した際生じた脂質酸化物として、9-HODE, 13-HODE, 13-HOTrE, 9-KODE, 13-KODEが、処理後3日後に増加した。この増加量はWTに比べてf6'h1で、より高い蓄積が見られた。この実験で8万倍希釈物処理をした植物体は、処理葉で黄化症状が見られたが、枯死には至らなかった。 b)食塩処理による塩害ストレス(100~300mM)処理。処理後の植物体からDNAを抽出した。この抽出DNAにヌクレアーゼ処理およびホスファターゼ処理をした後、電気化学検出器を用いて8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-oxo-dG)を検出定量した。食塩処理により、葉に色素蓄積症状が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タンパク質酸化物の検出は達成しているが、定量法確立が予定通り進行していない。タンパク質酸化物に関しては、酸化ストレスが生じている細胞内局在に関する情報を得る重要な手がかりであるため、配列情報が不可欠である。キヌレニンなどのアミノ酸分解物では、当初予定していた結果が得られない。2022年度は引き続き酸化タンパク質の定量法の検討を進める。また、核酸酸化物に関しても、その定量性に問題があるため、内部標準等の導入も含めて検討を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
1)脂質酸化物に関して:プリグロックス処理に加えて、塩害ストレス、傷害ストレス等のストレス実験についても検討をすすめ、付与するストレスの違いについても検討を進める。 2)核酸酸化物に関して:電気化学検出器で引き続き定量性を検討するとともに、質量分析器を用いた検出法、およびELIZA法も検討する。 3)酸化タンパク質の定量に関して:質量分析器を用いたショットガン法により引き続き酸化タンパク質の検出定量を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度の予算執行について、消耗品(脂質酸化物抽出前処理試薬の使用数や溶媒使用量)や旅費が予定していたものよりも少なく、残額が生じた。2022年度にこれらの予算を同じ項目にて使用する予定である。
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