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2020 年度 実施状況報告書

制がん作用を持つ新規プロテインノックダウン化合物の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05856
研究機関公益財団法人微生物化学研究会

研究代表者

渥美 園子  公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (30260136)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードプロテインノックダウン化合物 / E3ユビキチンリガーゼ / Ertredin / PROTAC / E3リガーゼモジュレーター
研究実績の概要

ErtredinはマウスNIH3T3細胞にEGFRvIIIを発現させたマウスNIH3T3/EGFRvIII細胞の3Dスフェロイド形成を抑制すること、EGFR関連タンパクユビキチン化を行うことはすでに報告した(Atsumi S. BMC Cancer 2016).
2020年度はマウス細胞内でErtredin処理により顕著にユビキチン化されるタンパクとしてヒストンH2BおよびH2AがMS解析により検出された。この二つの分子に着目して検討したところ、H2Aのユビキチル化がCulling Ring Ligase(CRL)の阻害剤によって抑制されることを示した。H2Aは通常の生理条件下でpolycomb repressive complex (PRC)1によってユビキチル化される。PRC1はCRL阻害剤に対し抵抗性であり、実際Ertredin非存在下ではH2Aのユビキチル化は抑制されない。したがってErtredin存在下のHistoneH2AはPRC1に代わりCRL阻害剤感受性の酵素、CRLなどによりユビキチル化された可能性が高い。すなわちErtredinがヒト細胞においてE3リガーゼモジュレーター活性を示すことが示唆された。本研究の目的のひとつがErtredinのPKO活性、すなわちE3リガーゼモジュレーター活性を明らかにすることであり、目的達成に一段進むことができた。
またErtredinの作用するリガーゼがCRL阻害剤で抑制されることから、CRLである可能性が高まり、作用標的分子の絞り込みにおいて重要な手がかりを得た。さらにH2Aのユビキチル化を指標として、E3リガーゼモジュレーターとしての活性を定量化することも可能になると考えられ、今後の解析に重要な実績を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ユビキチン結合タンパクを用いてマウス細胞可溶液よりユビキチン化されたタンパクを抽出し、MS解析を行ったところHistone H2BとH2Aのユビキチン化がErtredinの添加により誘導されることが検出された。まず差異が顕著だったH2B分子についてウエスタンブロットにより検討したところ、Ertredin処理後ミトコンドリア画分においてユビキチン化体とともにH2B自体の増加も見られた。
次にヒト細胞におけるErtredinの影響を検討したところ多発性骨髄腫の細胞において既存プロテインノックダウン化合物のLenalidomideと同定度以上の増殖抑制活性を示した。子宮頚がん細胞、肺がん細胞、膵がん細胞、胃がん細胞、について増殖抑制活性が見られたが、3Dスフェロイド特異的な抑制は見られなかった。
子宮頚がんHELA細胞についてウエスタンブロットで検討したところ、Ertredin処理によりH2Bについては全細胞では顕著な影響はないが一定の条件下で抽出した場合に増加が検出され、細胞内の局在性が変化した可能性が示唆された。
次にH2Aについて検討したところ全細胞内でH2Aのユビキチン化の増加が見られた。Ertredin存在下で検出されたH2Aのユビキチン化はCulling Ring Ligase(CRL)の阻害剤MLN4924で抑制された。Ertredin非存在下、通常条件ではH2AはMLN4924抵抗性のpolycomb repressive complex (PRC)1 によってユビキチン化されることが知られている。そこでErtredinはCRLに作用してPRC1の基質H2Aを奪いH2Aのユビキチン化を誘導していることが示唆された。

今後の研究の推進方策

Ertredinの存在下でおこるHistone H2Aのユビキチン化はMLN4924で阻害される。このことがCRLと結合するE3リガーゼモジュレーターであることを示唆する。そこでCRL構成成分を抑制したうえでErtredin添加時のHistoneH2Aのユビキチン化状態をモニタリングして、実際にCRLが関わっていることを確認する。CRL構成成分をSi-RNAで抑制下、Ertredin添加時にMLN4924で阻害されなければSi-RNAに抑制により、Ertredinの作用が抑制されたことになり、関わるCRLを絞り込むことが理論上可能である。CRLの主要構成成分は数種類以上あるが、検討してある程度標的を絞り込んだのちErtredin-ビーズとの共沈を行い、MS解析などにより、Ertredinの作用タンパクの解明を進め2021年度中に直接結合しているタンパクを解明したい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍に有り、旅費を使用する機会が無く、費用が抑制された。
繰り越し分は次年度物品費に追加する。
また次年度はコロナが回復し、旅費の使用が見込まれる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ErtredinによるユビキチルヒストンH2Bの細胞内局在性変化等について2021

    • 著者名/発表者名
      渥美園子, 野坂千里, 川田学, 澁谷正史, 内藤幹彦
    • 学会等名
      第25回がん分子標的治療学会
  • [備考] IMC微生物化学研究所HP

    • URL

      https://www.bikaken.or.jp/

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公開日: 2021-12-27  

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