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2021 年度 実施状況報告書

制がん作用を持つ新規プロテインノックダウン化合物の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K05856
研究機関公益財団法人微生物化学研究会

研究代表者

渥美 園子  公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (30260136)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードEGFRvIII / CD44 / CD133 / がん幹細胞 / スフェロイド / たんぱく抑制
研究実績の概要

EGFRvIIIは難治性神経膠芽腫(脳腫瘍)において30-40%の患者に診られる変異タンパクであり、腫瘍の悪性化の原因因子の一つと考えられている。Ertredinはマウス細胞にEGFRvIIIを発現させた細胞において3Dスフェロイド形成を抑制すること、EGFR関連タンパクユビキチン化を行うことはすでに報告した。一方ヒトがん細胞においてはErtredin3Dスフェロイドに対する毒性はマウス細胞の千分の一程度に低かった。今年度は新たにヒトグリオーマ(脳腫瘍)細胞にEGFRvIIIを導入して強制発現させ、Ertredinのタンパク抑制活性を検討した。その結果Ertredin添加後3時間以降にEGFRvIIIタンパクの抑制およびリン酸化の増加が見られた。EGFRvIIIのリン酸化増加はタンパク分解のシグナルであることが報告されており、Ertredinがリン酸化を介してEGFRvIII抑制を行っている可能性がある。今回用いた細胞はEGFRvIIIを導入発現後接着させた条件(2D)で細胞塊(スフェロイド)を形成した。本細胞において毒性は低いものの(IC50>10microM)、Ertredinは2Dスフェロイドをほぐす作用を示した。スフェロイド形成は3D培養においてはがん幹細胞の特色とも考えられている。そこでがん幹細胞マーカーのCD44、CD133、ALDHタンパクの動向を検討したところ、Ertredin添加3時間以降に顕著なタンパク抑制が起こっていた。EGFRvIIIタンパクの抑制をsiEGFRで行ったところCD44、およびALDHの抑制は見られず、2D条件下スフェロイド形成の抑制も見られなかった。2Dスフェロイド抑制活性およびEGFRvIII抑制活性にはErtredinのがん幹細胞などのタンパク分解が関わっている可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

今年度はErtredinがヒEGFRvIII発現ヒトグリオーマ細胞においてがん幹細胞マーカータンパク抑制作用を示す可能性があることを明らかにした。
Ertredinはマウス細胞スフェロイドではナノモル程度でも毒性を示すがヒト細胞では活性が低い。マウス細胞ではEGFRvIIIタンパクの抑制活性が見られたがヒトではどのような活性があるのか未知であった。このため、ヒト細胞においてもタンパク抑制活性を示すのかというところから検討する必要があった。そこでMS解析を行ったところマウス細胞においてErtredin処理によるヒストンH2BおよびH2Aのユビキチル化が検出されたことは昨年報告した。しかしながら、ヒト細胞においては主に通常状態でもヒストンユビキチル化が顕著にみられヒストンを指標としたErtredin解析は困難と考えられた。
そこで新たにヒトグリオーマ細胞にEGFRvIIIを導入して強制発現させ、Ertredinのタンパク抑制活性を検討した。本細胞においてErtredin添加後にリン酸化の増加を伴うEGFRvIIIタンパクの抑制は見られた。さらにErtredin添加によりCD44、CD133などのがん幹細胞マーカータンパク抑制がみられた。Si-RNAを用いたEGFR抑制によりCD44などは抑制されないことからEGFRvIII抑制はリン酸化を介してリソソームで分解されている可能性があり、がん幹細胞マーカーたんぱくがそれに関わっている可能性もある。研究計画としてはスタートとなる解析の指標を見出すところに時間がかかっており、遅れているが、Ertredinがん幹細胞マーカーたんぱくの抑制活性を示す可能性が判明し、想定外の有効性、重要性、発展性が示される形になった。

今後の研究の推進方策

マウス細胞で得られた知見をもって計画を考えたがヒト細胞ではErtredinの作用の再現が見られなかった。このため今年度は計画を変更しヒト細胞におけるErtredinの作用を検討することとした。そしてErtredinがEGFRvIIIを過剰発現させたヒトグリオーマ細胞において細胞の形態を変化させ、がん幹細胞マーカータンパクのCD44やCD133などの分解を誘導する可能性が示唆された。がん幹細胞は「自己複製能」と「多分化能」を持つがん細胞の中の一群であり、がんの薬剤耐性や再発を引き起こす。超低吸着プレート上での培養(3D)におけるスフェロイド形成はがん幹細胞の示す性質の一つであると言われている。CD44はヒアルロン酸リセプターであり、ヒアルロン酸を介した細胞凝集に役割を果たすほか、CD44の抑制がEGFRシグナル阻害を誘導することなども報告されている。CD133はEGFRシグナルの安定性に影響を及ぼしてがん幹細胞としての機能に影響を与えていることが報告されている。CD44およびCD133はがん幹細胞では顕著な発現が見られ、がん幹細胞マーカーたんぱくとして重要と考えられているが、役割や機構に関しては様々な議論がある。今後はさらに計画を変更し①Ertredinのがん幹細胞マーカーたんぱく抑制活性を検討し②EGFRvIIIタンパク抑制との関連を明らかにしたうえで、③Ertredinのタンパク抑製機構を 明らかにしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により出張費が節約できた、その上計画変更により想定していた外注費も節約できた。
今後は計画変更に伴い、新たなに新規抗体購入費(300千円)およびタンパク同定にに必要な試薬等消耗品購入費(182千円)siRNA外注費(300千円)を次年度使用額(782千円)より供出する計画である。

備考

https://www.bikaken.or.jp/

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Structure-activity relationships of natural quinone vegfrecine analogs with potent activity against VEGFR-1 and -2 tyrosine kinases2021

    • 著者名/発表者名
      Hayamitsu Adachi1, Chisato Nosaka, Sonoko Atsumi, Koichi Nakae,Yoji Umezawa, Ryuichi Sawa, Yumiko Kubota, Chie Nakane, Masabumi Shibuya, Yoshio Nishimura
    • 雑誌名

      The Journal of Antibiotics

      巻: 74 ページ: 734 -742

    • DOI

      10.1038/s41429-021-00445-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ErtredinによるユビキチルヒストンH2Bの細胞内局在性変化等について2021

    • 著者名/発表者名
      渥美園子, 野坂千里, 川田学, 澁谷正史, 内藤幹彦
    • 学会等名
      第25回がん分子標的治療学会

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公開日: 2022-12-28  

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