EGFRはリガンド結合後の自身のキナーゼの活性化を経て飲食作用(定形的飲作用)が起こり細胞内に取り込まれ、分解、またはリサイクルされ膜に戻ることが知られている。一方リガンド結合とは無関係にp38MAPKなどによりセリンリン酸化を経て非定型的飲作用が起こることが知られている。これらの飲作用はEGFRvIIIにおいても起こることが分かっている。最近抗体薬剤複合体(antibody drug complex: ADC)が新しい治療薬として脚光を浴びているが、ADC結合により定型的飲作用が抑制され効果が阻害されることからEGFR-ADC開発において非定型的飲作用の誘導は着目されている。 最終年度はヒト脳腫瘍細胞に過剰発現させたEGFRvIIIに対しErtredinがどのような影響を及ぼすのかを検討した。ヒト脳腫瘍細胞U251/EGFRvIIIにおいてErtredinは、ユビキチン-プロテアソーム系とは異なる分解系を誘導してEGFRvIIIのたんぱく抑制を行うことが分かった。ErtredinはEGFRvIIIのセリンのリン酸化を誘導し、細胞内取り込みが増加させることが明らかになり、非定型的な飲作用が誘導されているものと考えられた。またアナログ体の7methyl-Ertredin(7MeERT)についてより高い非定型的飲作用誘導活性がみられた。さらに野生型EGFRを過剰発現細胞で検討を行ったところErtredin類は野生型EGFRの非定型飲作用も誘導することが明らかになった。 EGFRvIIIおよび野生型EGFR過剰発現細胞についてEGFR-ADC(BTB-414)の活性に対する影響を検討したところ7MeERTに増強活性が認められた。現在7MeERTの標的たんぱくの解析を行っている。本研究は2023年度癌学会、がん分子標的治療学会発表予定で論文作成中である。
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