研究課題
(I) CETSAとChemProteoBaseを組み合わせた上記のシステム(2DE-CETSA)の構築:化合物が標的タンパク質に結合する時に熱安定性を変化させることを利用したセルサーマルシフトアッセイ(CETSA)法と2次元電気泳動(2DE)に基づくプロテオーム解析を組み合わせた新規の標的タンパク質解析法の2DE-CETSAの開発に着手し、その実用の可能性を示した(Cell Chem Biol, 27:186-196e, 2020)。その後、新規化合物などに応用するために、測定データからZスコアーの計算、並びに、各スポットのメルティングカーブの作成などを行うなど、計算基盤を整えた。(II) 2DE-CETSAを用いた新規化合物の解析による解析系の有用性の証明:がん細胞の増殖阻害を指標にスクリーニングで得られた、標的分子の知られていない活性物質について2DE-CETSAを用いた解析を行い、標的の候補となるタンパク質を見出している。また、関連したプロテオーム解析技術を利用して、新規作用が予測される化合物NPD9055を見出し、MSを用いたケミカルプロテオミクスを用いて結合タンパク質の解析を行った。その結果、NPD9055が3量体Giタンパク質に結合し、調節化合物として働くことが示された(Biosci. Biotechnol. Biochem. 84: 2484-2490, 2020)。この他、、Miclxin はMIC60に結合し、β-カテニン変異がん細胞にミトコンドリアストレスを介してアポトーシスを誘導すること (ACS Chem. Biol. 15:2195-2204, 2020)、並びに、シロイヌナズナとイネの塩耐性を増強する化合物FSL0260が複合体Iに結合するが明らかとなった(Sci. Rep. 10:8691, 2020)。
2: おおむね順調に進展している
2-D DIGEを利用した新しい解析系2DE-CETSAの実用の可能性を示すことができた。取得データを解析する計算基盤の整備も順調に進んでいる。さらに、新規生理活性物質の解析に取りかかれたことは、予想以上に計画が進んでいることを示している。さらに、解析系の最適化を進めることで、生理活性物質の迅速な標的解析が可能となることが期待される。
(1)昨年度に続き、2DE-CETSAのデータの解析基盤を改良することによって、より迅速な解析を可能とするシステムを構築する。(2)2DE-CETSAの解析はHeLa細胞で行なっているが、他の細胞や植物などの他の細胞にも拡張が可能である。シロイヌナズナなどの培養細胞を用いて2DE-CETSA法を検討する。(3)2DE-CETSAの解析の有用性を示すためには、標的未知化合物の標的分子を、本解析法を用いて明らかにすることが必要である。そのため、現在解析中の化合物を含め、新規化合物の解析を進め、その標的標的分子候補となるスポットを選び、バリデーション実験を行う。
コロナ禍もあり、実験遂行上の遅延がおこったため。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Heliyon
巻: 6 ページ: e05200
10.1016/j.heliyon.2020.e05200
Biosci. Biotechnol. Biochem.
巻: 84 ページ: 2484~2490
10.1080/09168451.2020.1812375
ACS Chem. Biol.
巻: 15 ページ: 2195~2204
10.1021/acschembio.0c00381
Sci. Rep.
巻: 10 ページ: 8691
10.1038/s41598-020-65614-9
Cell Chemical Biology
巻: 27 ページ: 186~196.e4
10.1016/j.chembiol.2019.11.010
http://www.cbrg.riken.jp/csrs/ja/