研究課題/領域番号 |
20K05857
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
室井 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (30261168)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロテオミクス / ケミカルバイオロジー / 生理活性物質 / 標的分子同定 |
研究実績の概要 |
(I) CETSAとChemProteoBaseを組み合わせた上記のシステム(2DE-CETSA)の構築:化合物が標的タンパク質に結合する時に熱安定性が変化することを利用したセルサーマルシフトアッセイ(CETSA)法と2次元電気泳動(2DE)に基づくプロテオーム解析を組み合わせた新規の標的タンパク質解析法の2DE-CETSAの開発し解析基盤は既に整えている。さらに、(II)からのフィードバックにより解析系の改良を行なった。また、動物細胞であるHeLaを用いて検討してきたが、植物であるシロイヌナズナの細胞を用いた解析でも、解析ができることを確認した。 (II) 2DE-CETSAを用いた新規化合物の解析による解析系の有用性の証明:がん細胞の増殖阻害を指標にスクリーニングで得られた、標的分子の知られていない活性物質、あるいは、植物細胞を標的とした化合物について2DE-CETSAを用いた解析を行い、標的の候補となるタンパク質を見出している。また、タンパク質発現の変化を指標とした解析システムChemProteoBase解析を含め関連したプロテオーム技術を利用して、新規化合物Glutipyranが解糖系酵素の発現上昇、並びに、小胞体ストレス誘導化合物と類似したプロファイルを示すことを明らかにし、標的分子がGlutであることをあきらかにすることにつながった(ACS Chem. Biol. 16: 1576-1586, 2021)。新規DHDO阻害剤のIndoluidin Eの標的同定にも貢献した(ACS Chem. Biol. 16: 2570-2580, 2021)。さらに、化合物結合タンパク質の解析において、シロイヌナズナのセシウム耐性を増強する化合物の標的分子して、BETA-GLUCOSIDASE 23を同定した(Sci. Rep. 11: 21109, 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2-D DIGEを利用した新しい解析系2DE-CETSAの実用の可能性を示すことができた。取得データを解析する計算基盤の整備も順調に進んでいる。さらに、新規生理活性物質の解析も進んでおり、順調に計画が進んでいることを示している。さらに、解析系の最適化を進めることで、生理活性物質の迅速な標的解析が可能となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1)昨年度に続き、2DE-CETSAのデータの解析基盤を改良することによって、より迅速な解析を可能とするシステムを構築する。 (2)2DE-CETSAの解析はHeLa細胞で行なっているが、他の細胞や植物などの他の細胞にも拡張が可能である。異なる培養細胞を用いて2DE-CETSA法の拡張を検討する。 (3)2DE-CETSAの解析の有用性を示すためには、標的未知化合物の標的分子を、本解析法を用いて明らかにすることが必要である。そのため、現在解析中の化合物を含め、新規化合物の解析を進め、その標的標的分子候補となるスポットを選び、バリデーション実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍もあり、前年度からの持ち越しに加え、本年度も実験遂行上の遅延がおこったため。遅延分の実験、主に推測された化合物の標的分子の証明実験に用いる。また、解析用のサーバーや端末などの充実などに利用し、効率的な研究を行う。
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