研究課題/領域番号 |
20K05858
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
野川 俊彦 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 技師 (40462717)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 微生物二次代謝産物 / ブロスライブラリー / 新規活性物質 / 多変量スクリーニング |
研究実績の概要 |
本研究課題では以下の5項目に沿って研究を進めている。(1)複数培地条件によるブロスライブラリーの作製、(2)ライブラリーのLC/MS分析およびTLCによる含有化合物の物性取得、(3)ライブラリーの生物活性評価、(4)物性データおよび生物活性データの多変量解析によるブロスの評価、(5)活性物質の単離・同定。本課題2年目となる昨年度は、初年度に作製した約1,500種のブロスをもとに(2)および(3)を中心に実験を進め、得られたデータに基づき(4)の多変量解析による評価を開始した。(2)のLC/MS評価については1,500種全てについて分析を終了した。TLCによる評価もほぼ完了し、いくつかの興味深いブロスを検出することができた。(3)の活性評価についても作製したブロスについて細胞毒性および抗菌活性の評価を完了した。それらデータに基づき多変量スクリーニングを行いいつくかの興味深いブロスを見出すことができた。スクリーニングの結果から、生物活性を有する培養条件依存的な窒素含有化合物を見出すことができた。それらについて単離、構造決定を行い学会などで報告した。スクリーニングの過程で収集した物性データは単離の過程でも有用であり、目的化合物の探索、続く単離・精製過程を効率よく行うことができた。以上の結果から、本方法により微生物の二次代謝産物生産能を引き出すことができ、ブロスライブラリーを拡張できることを確認することができた。この方法により優位に生物活性を有する構造的に特徴的な化合物を探索できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ブロス調製が順調に進んだことから、LC/MSおよびTLCによるブロスに含まれる二次代謝産物の物性評価と、ブロスの活性評価といった異なる視点からのブロス評価方法をバランスよく進めることができた。そのため特定のデータに偏ることなく物性、活性の両方に基づいた多変量スクリーニングを行うことができた。その結果、昨年に引き続き興味深いブロスを見出すことができ、それら化合物について効率よく単離と構造決定まで進めることができた。また、それらの結果について学会等で報告することができた。以上のことから本課題が順調に進んでいると結論した。
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今後の研究の推進方策 |
今までの実験を通して、本方法が微生物の有用新規二次代謝産物の探索および単離に有用であることが確認できた。さらに、探索原料となる微生物ブロスを十分に作製することができ、その資源を有効活用するための物性データおよび活性データが十分に揃った。最終年度である今年は、それら資源およびデータを活用し、新規活性物質の探索を中心に研究を進める。加えて、本方法の有用性や応用について検証する。
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