研究実績の概要 |
本研究課題では以下の5項目に沿って研究を行った。(1)複数培地によるブロスライブラリーの作製、(2)ライブラリーのLC/MS分析およびTLCによる含有化合物の物性取得、(3)ライブラリーの生物活性評価、(4)物性データおよび生物活性データの多変量解析によるブロスの評価、(5)活性物質の単離・同定。ライブラリー作製については、放線菌および糸状菌をそれぞれ複数の培地・培養条件にて培養し、約1,500種の微生物ブロスを調製した。それらについてLC/MS分析およびTLC分析を行い、含有化合物のUV、分子量および構造、特にTLCの呈色反応による窒素含有の有無に関する物性情報を収集した。生物活性については、癌細胞に対する細胞毒性、微生物に対する抗菌活性などを主に評価した。これら情報を多変量解析などを用いて総合的に判断し、新規化合物を生産していると考えられるブロスの選定を行った。特に活性が培養条件に依存し、その中でも窒素を含有していると予想される化合物を含むブロスに着目した。選定したブロスより新規化合物を含むいくつかの興味ある二次代謝産物を単離、同定した。その中の一つ、新規ペプタイボール類は、特定の培養条件でのみ生産され、別の条件では鎖長の異なる類縁化合物が生産されていた。以上の結果から、本方法により微生物の生産能を引き出すことができ、限られた資源から多様なライブラリーを調製できることが確認できた。複数の評価方法を組み合わせ、総合的に評価することで優位に生物活性を有する構造的に特徴的な化合物を探索できることを確認した。培養条件で代謝産物が異なるという結果は、今後の生合成研究においても有用な知見になると期待できる。
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