研究実績の概要 |
本研究は、トリクロロアセトイミダートを用いた種々の反応を検討することを通じて、生物活性物質などの有用物質生産に応用する研究である。1,2-ジオールから誘導したbis-トリクロロアセトイミダート(bis-イミダート)の分子内環化反応についての検討に引き続き、トリクロロアセトイミダートの分子内共役付加反応についても検討し、除草活性を有するBacilosarcin Aを代表とするAmicoumacin類の側鎖アミノ酸の合成研究を行った。安価に入手可能なD-グルコースから調製可能な化合物を光学活性出発原料として選択し、それから得られるトリクロロアセトイミダートに対し分子内共役付加反応を検討した。その結果、高い選択性で窒素官能基の導入に成功し、その後のAmicoumacin類の側鎖アミノ酸への変換も達成した。本研究実績に関しては、学術論文として発表することができた(Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2023, 87, 131-137.)。また、Cytoxazoneの合成についても研究を計画した。すなわち、Sharplessの不斉ジオール化によって得られるジオールを光学活性出発原料とし、環状サルファイト構造を有するトリクロロアセトイミダートを調製した。トリクロロアセトイミダートを求核剤とし、環状サルファイトを脱離基としてその分子内SN2反応を検討した。その結果、短工程でCytoxazoneの合成を達成、その成果を農芸化学会などで発表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリクロロアセトイミダートの分子内共役付加反応について、安価に入手可能なD-グルコースから調製可能な化合物を光学活性出発原料として選択し、それから得られるイミダートに対し検討した。これによって除草活性を有するBacilosarcin Aを代表とするAmicoumacin類の側鎖アミノ酸の合成を達成し、学術論文として発表した(Y. Matsushima, Y. Ogawa, K. Nishi, and K. Nakata, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2023, 87, 131-137. https:/doi.org/10.1093/bbb/zbac182)。このほか、当初の計画に示さなかったトリクロロアセトイミダートの分子内SN2反応についても検討した結果、Cytoxazoneの合成に成功し、学会発表することができた。これらを鑑みると、概ね当初の合成計画に従った研究が進行していると言える。
|