研究実績の概要 |
酵母の一種Ogataea polymorpha NBRC 1476が触媒するα-アンゲリカラクトンを光学活性なβ-アンゲリカラクトンに異性化する生体触媒反応について検討を進めた。微生物菌体反応と酵素反応の両面から、微生物菌体量や酵素量、基質濃度、後処理方法などを精査し、酵素反応としての反応条件を確立した。並行して、基質特異性を精査するために必要な、酵素反応の基質となるα,β-不飽和ブテノライドと生成物標品となるラセミ体のβ,γ-不飽和ブテノライドを、2通りの方法により各種合成した。4-オキソカルボン酸誘導体を環化する方法と、酸塩化物からアレン酸エステルを合成し、加水分解後に生じるカルボン酸を環化する方法である。合成した各種のα,β-不飽和ブテノライドを用いて、Ogataea polymorpha NBRC 1476を用いる生体触媒不斉異性化の基質特異性を精査した。その結果、この反応は各種の光学活性なα,β-不飽和ブテノライドの合成に有効であることが明らかになった。 生体触媒による第一級アルコールの酸化と、続く酵素内での立体選択的な環化が連続的に進行するドミノ型酸化‐不斉環化反応の開発に取り組んだ。前年度に基質として合成した第一級アルコールは、UV吸収を観測できるフェニル基をもつビシクロ[4.3.0]ノナン骨格の構築につながるものであったが、本年度は、生物活性天然有機化合物に数多く含まれるビシクロ[4.4.0]デカン骨格の構築を志向し、適切な炭素鎖と置換基を導入したアルコールを合成し、環化生成物の標品の合成に取り組んだ。次いでこれら基質の酸化を触媒する微生物の探索に取り組んだ。
|