研究実績の概要 |
酵母Ogataea polymorpha NBRC 1476が触媒するα-アンゲリカラクトンを光学活性なβ-アンゲリカラクトンに異性化する生体触媒反応について検討を進めた。この酵母の示す酵素活性について、酵素の精製によりその構造や機能を解明することを目指した。まず、HPLC分析で酵素活性を評価する方法を確立し、この方法を用いて酵素活性を評価しながら酵素の精製を検討した。培養した酵母を緩衝液と懸濁後に破砕して遠心分離し、上清を無細胞抽出液として得た。熱処理と硫安分画により精製度を高め、次いで、疎水クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーと順次精製を進めた。各精製段階の酵素液について、比活性とSDS-PAGEをもとに評価し、20.0 kDa付近のタンパク質が目的の酵素であると推定した。N末端アミノ酸解析の結果、機能未知タンパク質と高い相同性を示し、SDS-PAGEから推定される分子量とも良い一致を示した。 生体触媒による官能基変換をトリガーとして、生じた反応性の高い中間体が酵素のアミノ酸残基の形成する不斉反応場を利用して、光学活性な有用物質へと変換されるドミノ型反応を開発し、ドミノ型不斉合成プロセスgへと展開することを目指した。市販のα-アンゲリカラクトンを基質として作用する微生物を各種スクリーニングする中で、生体触媒によるプロトン移動を経る不斉異性化反応を見出した。脱プロトン化によるジエノラートの生成と、引き続くエナンチオ面選択的不斉プロトン化により進行すると考えられる。これまでの検討結果から、この反応が各種の光学活性なα,β-不飽和ブテノライドの合成に有効であることを示すことができ、また、反応を触媒する酵素の精製も概ね達成することができた。
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