研究課題
近年,アレルギーや生活習慣病などの炎症性疾患に腸内マイクロバイオームが大きく関与していると考えられており,炎症性疾患のリスクファクターとして社会的にも関心が高い. 本研究では,食物アレルギーの発症が腸内細菌環境に強く影響を受けることを卵白オボアルブミン(OVA)特異的T細胞受容体トランスジェニックマウス(OVA23-3マウス)による食物アレルギーモデルとして,さらに腸内細菌環境を制御できるマウスの飼育条件にて,食物アレルギーの発症において重要な食餌性抗原に対するT細胞応答を詳細に解析することをめざした.すなわち,腸内細菌を制御できる環境下で無菌マウスやノトバイオートマウスを用いて,食物アレルギーの発症において,摂取する食餌性脂肪の条件が抗原特異的T細胞応答を介した腸管免疫系への影響や,アレルギー性炎症反応に対してどのように作用するのかを細胞分子レベルで解析することを実施する.これにより,高脂肪摂取によって誘導される炎症反応と食物アレルギーの免疫・炎症反応の関係を調べ,生体内の炎症反応の制御に対して有用な知見を得ることをめざしている.まず,SPF環境下で総脂質含量20%の高脂肪実験飼料において,n-6系脂肪酸を多含するコーン油を2.4%配合した高脂肪食,コーン油1.2%配合高脂肪食,コーン油を配合していない対照食(いずれも卵白を含まない実験食)をOVA23-3マウスに6週間自由摂取させた後,さらにそれぞれのコーン油配合比率の卵白配合飼料を2週間,自由摂取させた。そして,同マウスのパイエル板,腸間膜リンパ節細胞と脾臓細胞における抗原特異的T細胞応答(サイトカイン産生)とT細胞フェノタイプ,加えて,盲腸内容物中の腸内細菌叢の解析を16S rRNA解析により解析した.その結果,脾臓および腸間膜リンパ節細胞において、コーン油の摂取量が多いほど感作型T細胞の割合が高い傾向がみられた.
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の影響で,大学での研究活動において研究者の立ち入り人数,活動時間が著しく制限を受けたため,実験動物の飼育管理においても頭数を制限した維持管理をせざるを得ない状況が6ヶ月ほど続いた.そのため,実施予定の動物実験の進捗状況が遅れており,繁殖により実験に使用できる動物の確保が難しい状況に陥った.そして,当初予定していたn-3系およびn-6系の異なる種類の脂肪酸による血中抗体価,T細胞応答などに及ぼす影響の検討が,n-6系脂肪酸のみを用量を変えて行う検討のみ実施することとなった.本来予定していた実験内容を次年度において実施すべく,現在,実験を遂行中である.
前年度実施予定であった高脂肪食条件下でのn-3系脂肪酸の摂取量の違いが,食物アレルギーモデルマウスにおいてT細胞応答,腸管炎症,などにおいてどのような影響を及ぼすのかを検討する.さらに,無菌マウスにおけるn-3系およびn-6系食餌性脂肪酸の摂取の影響が,食物アレルギーモデルマウスにおいてT細胞応答や腸管炎症反応,さらに腸内容物中の代謝産物に対してどのような影響を及ぼすのか,検討を行う予定である.
令和2年度の研究計画が新型コロナウイルス感染症の影響を受けたために,実験の進捗状況に遅れが生じたことにより,予定していた実験が首尾よく実施できなかった.次年度にその遅れを取り戻すべく実験を効率的に実施していくことを予定しており,同研究費の予算の執行にご配慮いただきたい.
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Immunobiology
巻: 226 ページ: -
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