研究課題/領域番号 |
20K05882
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70328706)
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研究分担者 |
津田 真人 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (50525681)
高橋 恭子 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70366574)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 高脂肪 / 脂肪酸 / T細胞応答 |
研究実績の概要 |
近年,アレルギーや生活習慣病などの炎症性疾患に腸内マイクロバイオームが大きく関与していると考えられており,炎症性疾患のリスクファクターとして社会的にも関心が高い. 本研究では,食物アレルギーの発症が腸内細菌環境に強く影響を受けることを卵白オボアルブミン(OVA)特異的T細胞受容体トランスジェニックマウス(OVA23-3マウス)による食物アレルギーモデルとして,さらに腸内細菌環境を制御できるマウスの飼育条件にて,食物アレルギーの発症において重要な食餌性抗原に対するT細胞応答を詳細に解析することをめざした.通常の飼育環境下のマウスと腸内細菌を制御できる環境下での無菌マウスやノトバイオートマウスを用いて,食物アレルギーの発症において,摂取する食餌性脂肪の条件が抗原特異的T細胞応答を介した腸管免疫系への影響や,アレルギー性炎症反応に対してどのように作用するのかを細胞分子レベルで解析することをめざした.通常飼育環境下で総脂質含量20%の高脂肪実験飼料において,n-6系脂肪酸を多含するコーン油を2.4%配合した高脂肪食,n-3系脂肪酸を多含する魚油2.4%配合高脂肪食,およびコーン油と魚油をいずれも配合していない対照食(いずれも卵白を含まない実験食)をOVA23-3マウスに6週間自由摂取させた後,さらにそれぞれのコーン油魚油等配合の卵白配合飼料を6週間,自由摂取させた.その結果,腸間膜リンパ節の感作型T細胞(CD4+CD45RBloCD69hi)の発現量がコーン油,対照,魚油の順に高い傾向がみられ,血中抗体価(総IgE)は魚油はコーン油に比べ,どのデータでも比較的低く抑えられていた.このことから,経口摂取したOVA抗原特異的T細胞応答については,魚油とコーン油ではT細胞応答誘導効果が異なり,魚油の方がアレルギー症状の抑制に効果的に働く可能性があると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の感染予防措置として研究室内での活動時間が制限され続けている状況と,研究室内感染者の影響で研究室内の活動が制限され,動物実験の進捗状況が遅れてしまったことによる.さらに,無菌マウス用に作製した実験飼料においては,外部機関に委託して製造した実験飼料が,予定していた配合の実験飼料が製造メーカーのミスによって異なる配合条件の飼料が納品されていたことが発覚した.すなわち,実験実施期間中に実験動物への影響が当初の先行実験と異なる体重への影響などから,後になってその実験飼料の条件が当初の予定し委託生産していたはずの条件と異なることが明らかとなり,予定していた実験が実施できなかった. 現在,再度,実験動物を交配して確保し,実験を鋭意遂行中である.
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今後の研究の推進方策 |
当初実施予定であった無菌マウスおよび特定の腸内細菌のみを有するノトバイオートマウスを用いたn-3系脂肪酸,n-6系脂肪酸をそれぞれ含有する高脂肪食条件による食物アレルギー誘導実験を行い,抗原特異的T細胞応答およびその関連遺伝子発現に対する影響を検討する.同時に,それらの異なる腸内細菌環境が腸内容物中の代謝産物(脂肪酸濃度)に与える影響も併せて検討を行う予定である.それにより,摂取する脂肪酸によって腸内環境を介した炎症制御応答に関わる分子機構の解明をめざして参りたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は令和2年度と同様に新型コロナウイルス感染症の影響で,研究室内での活動が制限されたために予定していた実験計画の進捗状況が遅れ,特に無菌動物の維持管理にかける作業を制限せざるを得ない状況となったことから,当初予定していた無菌動物を使用した解析を十分に実施できなかった.次年度はこの遅れを取り戻すべく,使用する動物の繁殖計画を改善した上で実験動物を確保し,さらに,異なる脂肪酸摂取による炎症反応の制御に関与する分子の解析を精力的に実施して参りたい.
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