本研究では、これまでに、0.1~1μmの蛍光レベルしたマイクロプラスチック(ポリスチレン)をラットに4週間経口投与しても、肝臓、腎臓および脳への蓄積性はほとんどないこと、肝機能や血清脂質濃度に対して大きな影響を及ぼさないことを明らかにしてきた。 今年度は、短期間に多量に蛍光ラベルしたマイクロプラスチックを投与して、体内の蓄積を確認することとした。蛍光標識した0.5μmのマイクロプラスチックビーズを先行研究の5倍量添加した食事を4週間自由摂取させた。投与終了後に、肝臓、腎臓および脳を採取して、蛍光顕微鏡により蛍光ビーズの蓄積を観察した。その結果、各臓器中には蛍光ビーズの蓄積は観察されなかった。糞中には、多数の蛍光ビーズが観察された。 利用されているプラスチックの多くは、ポリエチレンやポリプロピレンである。そこで、ポリエチレン製のマイクロプラスチックの安全についても、今年度検討を行った。10μmのポリエチレン製のマイクロプラスチックをラットの飼料に3%添加して、8週間自由に摂取させた。その結果、肝機能の指標(AST、ALTなど)、腎機能の指標(尿素窒素、クレアチニンなど)、体内の炎症及び血清脂質濃度(LDL-コレステロール、HDL-コレステロールなど)は、対照群と比較して有意な差はなかった。飼料摂取量、臓器重量(肝臓、腎臓)も、対照群と比べて有意な差はなかった。しかしながら、試験群の糞重量は、添加したマイクロプラスチックに相当する重量分高い値を示した。以上の結果から10μmのマイクロプラスチックをラットに8週間摂取させても、肝機能、腎機能、炎症の指標及び血清脂質濃度などに対して悪影響を及ぼさないことが示唆された。より長期的な影響については、今後さらなる検討が必要と考えられる。
|