研究実績の概要 |
前年度ではステロイドサポニンであるジオスシン、ジオスゲニン、コリアジャポニンのiPS細胞とゴーシェ病患者から分離された細胞を用い、配糖体化合物のオートファジーとGBAに与える影響を評価した。その結果、GBA認識部位の最も多いコリアジャポニンは正常なiPS細胞とゴーシェ病由来iPS細胞でオートリソソーム形成活性と細胞内GBA誘導性を高く誘導した。コリアジャポニンがGBA活性を誘導した理由としては以下の 2つの仮説が考えられる。1つ目は細胞膜上の受容体に作用する場合で2つ目はエンドサイトーシスなどで細胞内に取り込まれ分子シャペロンとして作用する場合である。ジオスゲニンの受容体の1, 25D3-膜結合型迅速応答ステロイド結合タンパク質(1,25D3-MARRS) のリガンドである1,25-ジヒドロキシビタミンD3(活性型ビタミンD)はGBAの遺伝子である klothoの発現を上昇させる。また、GBAは小胞体を通過する際に、本酵素と可逆的に相互作用する低分子化合物があると立体構造を安定化させる。GBAの認識部位はコリアジャポニンで2箇所、ジオスシンで1箇所あることから、 これら化合物はGBAのシャペロンとなる可能性がある。よって、令和4年度は細胞表面のステロイド受容体とシャペロン効果について検討を行なった。ステロイドの受容体をフィルターリタゼーションアッセイで検出したところ、1,25D3-MARRSの活性化がジオスゲニンとジオスシンで認められた。GBAの遺伝子発現量はステロイドサポニンで上昇するものの、ステロイドサポニン間で大きな変化は認められなかった。GBA活性はコリアジャポニンが最も高く誘導することから、コリアジャポニンによるGBA誘導はシャペロン効果によるものと考えられた。また、コリアジャポニンによるオートファジー誘導はGBA活性上昇によると推定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は配糖体化合物の受容体の検索とオートファジーとGBA活性化のメカニズムの解明が目的であった。受容体については1, 25D3-膜結合型迅速応答ステロイド結合タンパク質(1,25D3-MARRS)の活性化が認められ、ステロイドサポニンのアグリコン部分が関与することが明らかになった。また、GBAの誘導は1,25D3-MARRSとシャペロン効果により、起こることが考えられた。また、iPS細胞の時と神経に分化させた時では、ステロイドサポニンの効果が異なることから、ステロイドサポニンの膜透過性がシャペロン効果を制御する可能性が示唆され、受容体以外のGBA活性化があることを見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はステロイドサポニン受容体の活性化とGBA誘導について検討した。ステロイドサポニンはジオスゲニン、ジオスシン、コリアジャポニンを用いたので、アグリコン部分のジオスゲニンの受容体である1, 25D3-膜結合型迅速応答ステロイド結合タンパク質(1,25D3-membrane-associated, rapid response steroid-binding protein;1,25D3-MARRS) について検討したところ、1,25D3-MARRSの活性化がジオスゲニンとジオスシンで認められた。GBAの遺伝子発現量はステロイドサポニン存在下で上昇するものの、ステロイドサポニン間で大きな変化は認められなかった。よって、1,25D3-MARRS活性化によるklothoの発現はアグリコンの構造によることが明らかになった。さらに、GBA活性はコリアジャポニンが最も高く誘導することから、コリアジャポニンによるGBA誘導は1,25D3-MARRS活性化に加えて、コリアジャポニンのシャペロン効果があることが考えられた。さらに、コリアジャポニンによるオートファジー誘導はGBA活性上昇によると推定された。令和5年度はステロイドサポニンの膜透過性とシャペロン効果の関係を明らかにする。また、オートファジー阻害剤存在下でジオスゲニン、ジオスシン、コリアジャポニンのGBA誘導を検討する。
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