研究課題/領域番号 |
20K05891
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西 甲介 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (80578097)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ドコサヘキサエン酸 / DHA / 魚油 / アレルギー / 構造活性相関 / ドコサヘキサエノイルエタノールアミド |
研究実績の概要 |
本研究では、魚油等に含まれる多価不飽和脂肪酸の一つであるドコサヘキサエン酸(DHA)のアレルギー症状緩和効果の作用機序の解明、およびDHA代謝物類縁体の構造活性相関解析を行う。これまでの研究結果から、DHAのアレルギー症状緩和効果は、その代謝物の一つであるドコサヘキサエノイルエタノールアミド(DHEA)に基づく可能性がある。そこで、マウス骨髄細胞を生体外でマスト細胞に分化誘導し、IgE抗体で感作させた。その後、DHEA存在下/非存在下で細胞を抗原で刺激して活性化させ、細胞内シグナル伝達をウエスタンブロット法により解析した。その結果、DHEAは抗原刺激により活性化する細胞内シグナル伝達経路を制御することによって、マスト細胞の活性化を阻害することが明らかとなった。また、ラット好塩基球白血病細胞株RBL-2H3細胞を用いて、同様の実験を行った結果、DHEAはRBL-2H3細胞と比べて、マウス骨髄細由来マスト細胞に対してより強く作用することが明らかとなった。さらに、脂肪酸エタノールアミドを種々合成し、抗原刺激に基づく脱顆粒反応に及ぼす影響を評価した。その結果、n-3多価不飽和脂肪酸のエタノールアミド誘導体は、DHEAと同等の脱顆粒抑制効果を示すことが明らかとなった。一方、n-3多価不飽和脂肪酸以外の脂肪酸のエタノールアミドの脱顆粒抑制効果は低いことが明らかとなった。したがって、脂肪酸エタノールアミドのマスト細胞活性化阻害効果は、二重結合の位置が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画のうち、予定どおりに行えていない実験項目があるが、合成実験が想定よりも早く進んだため、研究計画全体の進捗としては概ね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に完了しなかった研究項目に加えて、今年度の研究計画を予定どおり実施する。DHEAの標的タンパク質の同定に向けた実験、および動物実験を積極的に推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画どおりに進まなかった実験項目があるため、本来購入すべき試薬等の購入に至らなかった。翌年度分と合わせて、実験動物、試薬、投稿論文投稿費用などに使用する計画である。
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