研究課題
本研究では、魚油等に多く含まれるn-3長鎖多価不飽和脂肪酸の一つであるドコサヘキサエン酸(DHA)のアレルギー症状緩和効果の作用機序の解明、およびDHA代謝物類縁体の抗アレルギー活性における構造活性相関を解析する。これまでの研究結果から、DHAのアレルギー症状緩和効果は、その代謝物の一つであるドコサヘキサエノイルエタノールアミド(DHEA)に基づく可能性が見出されている。最終年度では、作製方法を確立した食物アレルギーモデルマウスを用いて、DHEAの経口投与が食物アレルギー反応に及ぼす影響について検討した。その結果、脾細胞によるTh2サイトカインIL-4、IL-5、IL-13の産生量の減少傾向が認められた。これは以前に花粉症モデルマウスを用いて同様の検討を行った際の結果と一致しており、DHEAの経口投与がTh2サイトカイン産生を抑制する現象の再現性を確認することができた。また、これまでにDHAあるいはDHEAの標的と報告されているGPRに対して薬理学的検討を行った結果、DHEAによる抗アレルギー効果はこれらのGPRを介さず、他の標的因子を介することが示唆された。研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、DHEAは抗原刺激により活性化する細胞内シグナル伝達経路を下方制御してマスト細胞の活性化を阻害すること、および、DHEAの経口摂取はIgE抗体の産生を阻害しないことを明らかにすることができた。加えて、n-3長鎖多価不飽和脂肪酸のエタノールアミド誘導体は、DHEAと同等のマスト細胞活性化抑制効果を有することを明らかにした。一方、n-3長鎖多価不飽和脂肪酸以外の長鎖脂肪酸エタノールアミドのマスト細胞活性化抑制効果は弱いことを明らかにした。このことから、長鎖脂肪酸エタノールアミドのマスト細胞活性化抑制効果は、二重結合の位置が重要であることを明らかにすることができた。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件)
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