世界的に感染症の脅威に曝されている昨今では、その予防や重篤化の軽減には免疫能・生体防御能の増強が極めて重要である。本研究では、生体防御の中心を担う免疫細胞の一つであるナチュラルキラー細胞の活性化を誘導するインターロイキン12(IL-12)に注目し、マクロファージからのIL-12発現・分泌を亢進する乳酸菌を探索・解析することとした。 マクロファージモデルJ774.1細胞に乳酸菌死菌体を添加してインキュベートした後、IL-12のmRNA発現量を測定した。その結果、2種類の乳酸菌株が顕著にIL-12のmRNA発現を亢進し、これらはIL-12の分泌も亢進することを見出した。また2株のうちの1株についてさらにIL-12発現亢進の作用機序を解析した結果、菌体中のRNAがTLR8に作用しMyD88を介して転写因子IRF5を活性化することでIL-12の発現・分泌を誘導することが示唆された。 並行して、本乳酸菌株を様々な食品に添加しやすくすることを考慮し粉末化した菌体を調製して検討したところ、粉末化した菌体でもIL-12の発現・分泌を亢進することが確認された。 また本乳酸菌株がin vivoにおいてもIL-12発現を亢進するか、Balb/cマウスに本菌株を3週間経口投与して検討した。その結果、マウス小腸ではIL-12のmRNA発現量が増加する傾向がみられ、また肺では有意な増加がみられた。これより本菌株は、in vivoにおいても一部臓器でIL-12発現を亢進する可能性が示唆された。 さらに本菌株は、IL-12に加えて抗炎症性サイトカインであるIL-10の発現・分泌を亢進することをも見出した。これより、本乳酸菌株は生体防御能を高めることが期待されるIL-12の発現を亢進すると同時に過剰な免疫賦活(炎症)を抑制するIL-10の発現をも亢進し、サイトカインバランスを制御する可能性が示唆された。
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