研究実績の概要 |
低温(10℃)での二酸化炭素マイクロバブル(CO2MB)により処理したEscherichia coliの生存数を至適培地を用いた測定により2 hで約6オーダー失活すること確認した。加えて、食塩を加えた至適培地および最小培地を用いた測定により形成したコロニー数は至適培地を用いた測定よりも少なかったことから、CO2MB処理によりE. coliは細胞膜の損傷を生じたことが認められた。CO2MB処理によるE. coliの細胞膜流動性の変化は1,6-diphenyl-1,3,5-hexatriene (DPH)および1-anilino-8-naphthalene sulfonate (ANS)を用いた蛍光分析により5 minで、N,N,N-trimethyl-4-(6-phenyl-1,3,5-hexatrien-1-yl)phenylammonium p-toluenesulfonate (TMA-DPH)では処理時間に伴いそれぞれ生じたが、SDS-PAGEにより細胞膜タンパク質への影響は確認できなかった。さらに、CO2MB処理によりE. coliの細胞内外のpHは5 minで著しく低下しており、DPHおよびANSを用いた蛍光分析との相関性が認められた。加えて、CO2MB処理によるE. coli細胞からの核酸およびタンパク質の漏出は処理時間に伴い増加しており、TMA-DPHを用いた蛍光分析との相関性が認められた。よって、CO2MB処理によるE. coliの細胞内外の物質移動は細胞膜損傷の程度に伴うことが示唆された。 また、CO2MB処理前後でE. coli細胞からのタンパク質の回収率およびフェノール・クロロホルム抽出によるDNAの回収率は変わらなかったが、キットを用いた抽出によるDNAの回収率は処理時間に伴い減少した。よって、CO2MB処理のE. coli細胞内への影響が示唆された。 比較のため、CO2MB処理後と同じ細胞外pHに調節したE. coli懸濁液を窒素MB処理した際に、生存数の減少はほとんど生じなかったが、細胞膜流動性の変化、細胞内酸性化、DNA回収率の低下および溶存酸素濃度の低下はCO2MB処理と同様に生じた。
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