35、40および45℃で低加圧二酸化炭素マイクロバブル(CO2MB)により処理したSaccharomyces pastorianusの細胞内タンパク質およびDNAへの影響を検討した。 CO2MB処理したS. pastorianus細胞からタンパク質を抽出してSDS-PAGEを行うと、可溶性タンパク質のバンド濃度は減少し、不溶性タンパク質が増加した。そのうちの1つのバンドを切り出してペプチドマッピングを行い、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間質量分析計(MALDI-TOFMS)により同定した結果、解糖系酵素の1つであるglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (GAPDH)と特定した。さらに、SDS-PAGEにおけるGAPDHのバンド濃度はCO2MB処理の温度および時間に伴い減少した。しかしながら、S. pastorianus細胞内のGAPDH活性は35および40℃でのCO2MB処理において短時間で高まったが、処理時間に伴い低下した。さらに、45℃でのCO2MB処理では短時間で低下した。 CO2MB処理したS. pastorianus細胞から抽出したDNA濃度は、35℃では未処理と変わらなかったが、処理温度を40および45℃に上げると減少した。さらに、抽出したDNAの脱塩基はCO2MB処理の温度および時間に伴い増加したため、細胞内で活性酸素を生じたことが示唆された。一方、DNA酸化損傷マーカーである 8-hydroxy-2’-deoxyguanosineの発生はDNA濃度と同様の傾向を示したため、CO2MB処理の影響を受けないと推察された。 以上の結果から、CO2MBによりS. pastorianusの細胞内タンパク質の変性およびDNAの一部の酸化的損傷を引き起こすことが明らかとなった。
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