研究課題/領域番号 |
20K05901
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
曽我 慶介 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 主任研究官 (50746336)
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研究分担者 |
吉田 光範 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 主任研究官 (70772630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | とうもろこし / コメ / セントロメア / マルチコピー / 遺伝子検査 / 加工食品 / リアルタイムPCR / リピート配列 |
研究実績の概要 |
食品表示偽装や加工食品からの異物混入検知を目的とした農作物の高感度かつ特異的DNA検出法を開発するために、マルチコピーのDNAマーカーを探索する。 昨年度開発したトウモロコシの検出法の特異性に関して、作物ゲノムでより詳細に評価を行ったところ、一部の豆類に交差性を示し、ダイズでは40付近のCq値を示した。この方法を用いて、加工品であるコーングリッツおよびコーンフレーク(3製品)において、トウモロコシゲノムDNAの検出を試みたところ、従来の1コピー遺伝子SSⅡbでは検出されない製品もあったが、開発した方法では全製品で40未満のCq値が得られた。特にコーンフレークは高度な加工(高温・高圧)を施すため、原材料DNAが分解され十分な量のDNAを抽出および検出することが困難であったが、マルチコピー遺伝子を標的とした原材料特異的検出法を用いることによって高感度に原材料由来DNAを検出できる可能性があることが示唆された。 また、より特異性を改善した検出法を開発するために、新たにコメをモデル作物とし、セントロメア領域のリピート配列として知られるRCS2領域に着目した。データベースに登録されているRCS2の配列を参考にPCR法の開発に取り組んだが、従来PCRおよびリアルタイムPCRのいずれにおいても増幅の確認をすることができなかった。今後、増幅が困難である原因について、周辺配列を検証し、改善に努める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作物特異的なマルチコピー遺伝子を標的としたリアルタイムPCRによって、高感度に原材料由来DNAを検出できる可能性があることを示した。 新たに、より特異的な配列を探索するために、セントロメアのリピート配列に着目している。検出法を開発するために、データベースに登録されている配列を参照し、いくらかのPCRを試したがいずれも増幅効率が悪く、検出法開発の進捗が遅れている。周辺配列や配列多様性の観点から、原因を追究している。
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今後の研究の推進方策 |
コメのセントロメアのRCS2はRNAfold等で解析すると分子内で高次構造を取りやすいことが示唆されている。また、セントロメア配列は長いリピートアレイを形成しているため、従来のサンガー法や次世代シークエンサーでは配列の特定が困難なことからデータベース上では完全に解明されていない可能性がある。必要に応じてロングリードシーケンサーを用いて配列を明らかにし、周辺配列や配列多様性の観点から、原因を追究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はin silico解析を中心に研究を進めたことおよび参加予定の学会がオンライン開催になったことを理由に、物品費および旅費での使用が想定より少なくなった。また、年末に注文した輸入消耗品の一部が国際物流遅延により、納品が次年度に持ち越された。以上の理由により、次年度に繰り越して使用する。
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