研究実績の概要 |
これまでに認められた,果実の加工処理に伴う非抽出性プロアントシアニジン(NEPA)の形成について,そのメカニズムを追究するための実験を行った。 (1)マルメロにおけるNEPAの形成は,熱風乾燥で促進され,ブランチング処理によって低下したことから酵素反応が関与した可能性を検討した。マルメロやリンゴからの粗精製ポリフェノールと,細胞壁繊維画分との反応系において,マルメロ粗酵素液中のペルオキシダーゼ(POD)を作用させる試験や,ポリフェノール溶液と繊維画分のみで加熱濃縮させる反応系など,複数の処理を行った。その結果,POD活性が強いとNEPA形成に不利となり,60℃乾燥で認められたNEPA形成促進はPOD活性の低下が急速であることによるものと考えられた。 (2)煮沸に伴うNEPA形成に関するモデル実験については,カリンから抽出・粗精製したプロアントシアニジン(PA)をポリガラクツロン酸,リンゴペクチンあるいはリンゴ繊維画分と反応させる形で実施した。その結果,カリンPAはポリガラクツロン酸よりもリンゴペクチンと結合しやすく,特に高温酸性条件下でNEPA形成が促進されること,またこの際, NEPA形成は加熱30分以内が顕著であり, 長時間の加熱はPAの大幅な損失をもたらすことが確認された。 以上,本研究期間全体を通じて得られた成果として,1) 繊維画分に含まれるNEPAは胆汁酸吸着・排泄機能の点で有用であることが示され,2) PAに富む果実は,煮沸,冷凍,加熱調理や乾燥処理によって一部が繊維成分に結合してNEPA化し,胆汁酸吸着力を高めることが示され,3) 繊維画分とPAの結合によるNEPA化は,細胞破壊や加熱濃縮で促進されるが,褐色色素が形成される条件下では抑制されると考えられた。
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