研究課題/領域番号 |
20K05909
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 朝美 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (80589870)
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研究分担者 |
長富 潔 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (40253702)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セリンプロテアーゼ / イトヨリダイ / すり身 / トリプシン / cDNAクローニング / 大豆タンパク質 |
研究実績の概要 |
初年度は、まずイトヨリダイの火戻り誘発因子SSP(sarcoplasmic serine proteinase)の由来の解明を試みた。その結果、筋肉内在性のSSPは消化器官(肝膵臓・幽門垂・腸管)で生合成・分泌され、特に幽門垂と腸管で働くことがわかった。次に、本酵素のcDNAクローニングと精製酵素タンパク質の解析により、本酵素は新規のトリプシンであると考えられた。更に、魚体保存中のSSPの腹部筋への漏出、加熱ゲルの物性低下も確認した。以上より、イトヨリダイの火戻り現象は、本来消化に関与するSSP が、魚体の保存中に内臓から腹部筋に漏出することで誘引されることが示唆された。 令和3年度は、イトヨリダイの火戻り誘発因子SSPのmRNA量及び酵素活性の周年変化を調べた。その結果、肝膵臓におけるmRNA量は周年で変動しなかったのに対して、腹部筋において生殖腺発達期に高い活性が検出された。よって、生殖腺発達期における魚体保存中のSSPの腹部筋への漏出は、摂餌量の増加による消化管体積及び生殖腺体積の増加、消化酵素としてのSSPの活性化亢進に起因することが推察された。一方、腹部筋を除いた冷凍すり身のゲル形成能は一年を通して安定していたことから、腹部筋の除去により、高品質のイトヨリダイ冷凍すり身が通年生産可能であることがわかった。 令和4年度は、イトヨリダイ冷凍すり身の高品質化技術の開発の足掛かりとして、Kunitz型トリプシン阻害剤を含有する大豆タンパク質を添加して火戻りゲルを作製したところ、大豆タンパク質添加による火戻り抑制効果が認められた。 以上のとおり本研究では、イトヨリダイの火戻り誘発因子SSPを特定し、大豆タンパク質のすり身高品質化技術への応用可能性を示した。本研究成果は、スケトウダラに代わるすり身原料魚であるイトヨリダイの高品質すり身の安定供給に繋がることが期待される。
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