研究実績の概要 |
ジアシル型リン脂質として、C6:0、C12:0、C18:0を構成脂肪酸とするホスファチジルコリンをそれぞれ用い、o/wエマルションを調製した(e6、e12、e18)。各エマルションの平均粒子径は、e6: 983.6±27.6 nm、e12: 284.9±5.4 nm、e18: 316.9±11.6 nmとなり、e12とe18で有意差は無かった。30℃・暗所のもと、経時的に酸化一次生成物であるヒドロペルオキシドとToc残存率を測定した。 ヒドロペルオキシドの生成速度は、e6>e12>e18の順であり、Toc残存率の減少速度はe18>e12>e6の順であった。粒子径は小さいほどエマルション中の粒子の表面積は大きくなり、それだけ酸化されやすくなると想像できる。しかしこの結果、鎖長が長いリン脂質で調製されたエマルションは、その鎖長分酸素と油相との接触頻度が低下し、酸化速度が低下したと推察した。一方、粒子径が小さいとトリアシルグリセロール分子の動きが制限されて、酸化速度が小さくなることも報告されている(Nakaya et al., Lipids, 2005)が、e12とe18では平均粒子径に有意差がなかったことからもこの考えが支持できる。e12とe18に、水溶性ラジカル発生剤であるAAPHを添加して酸化させると、e18における酸化速度が上昇して、両者に差がなくなり、一方Toc減少速度はe18>e12であった。これより、e12よりもe18ではコミセルが形成され、これがAAPHにより酸化されヒドロペルオキシドを生成すること、また、e12よりもe18ではTocが界面に局在化しており、これがAAPHにより酸化され、Tocの減少を招いていると推察した。 以上より、鎖長がC18程度であると、酸素の油相に対する攻撃の障壁となること、さらにTocを油相-水相界面に局在化させることができると示された。
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