研究課題/領域番号 |
20K05913
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
熊澤 義之 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (90833054)
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研究分担者 |
時下 進一 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (60266898)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酵素 / 食品物性 / 酸化修飾 / ラッカーゼ / チロシナーゼ |
研究実績の概要 |
「食感」は食品のおいしさ発現の重要な要素の一つであるが、酵素的な食感の改質にはタンパク質架橋酵素であるトランスグルタミナーゼ(TG)が用いられている。本研究は、酵素を用いた新たな食品物性の改質技術として、酸還元酵素の活用を検討するものであり、更なる食品素材の改質技術の拡充と新素材創出への活用展開を目指すものである。2020年度は研究計画に沿って、①好熱菌ラッカーゼの発現系の構築、②イカ墨由来チロシナーゼの調製、及び③酵素基本特性の評価についての研究を実施した。まず、①は全ゲノム配列が決定されている高度好熱菌Thermus thermophilus HB27のラッカーゼ遺伝子を各種発現ベクターに挿入したプラスミドを作製し、大腸菌BL21に導入、タグ融合ラッカーゼの発現解析を行った。結果、一部可溶性画分での十分量のラッカーゼ生産を確認でき、大量発現系と精製法の構築に成功した。②では、まず入手可能な数種イカ墨よりチロシナーゼの分布を評価した。結果、比較的活性が高く、夾雑物を除去しやすいスミイカ(Sepia lycidas)を材料として選定した。超音波破砕や塩析等の物理化学的処理を試み、夾雑物を部分的に除去し、評価に供する酵素調製法を確立した。そして③として、①、②で得られた酵素及び市販酵素(Myceliophthora由来ラッカーゼ及び真菌由来チロシナーゼ)を含めて酵素特性評価を開始している。また、①の進展としてタグ融合ラッカーゼによる食品タンパク質との反応性評価を開始した。加えて酵素特性に影響すると想定される部位特異的変異を導入した改変型酵素の生産と精製も成功しており、特性評価及び食品タンパク質との反応性評価も開始した。結果、タグ融合ラッカーゼではTGでは架橋を起こさない卵白タンパク質の架橋が観察される等新たな知見が得られ始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの影響による登校制限により、20年度予定であった「食品タンパク質との反応性検討」において、タンパク質ゲルの調製方法や物性測定装置の活用などが十分に進捗させることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
計画通り推進することに加えて、組換えチロシナーゼの発現系構築を試みる。また、改質タンパク質の機能評価には多くの酵素量を必要とすることから、可溶性ラッカーゼとチロシナーゼの発現量をさらに増加させるため Pichia pastoris による発現系の構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の変更が生じたため。次年度、物品費として利用予定。
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