研究課題/領域番号 |
20K05914
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
津田 真人 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (50525681)
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研究分担者 |
細野 朗 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (70328706)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸管関連リンパ組織 / IgA / IgG2b / クラススイッチ / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
腸管関連リンパ組織(GALT)はIgA抗体産生の誘導組織として知られているが、小腸のパイエル板と比べて、大腸部位のGALTの機能は十分に明らかにされていない。本研究では、盲腸リンパ節の抗体産生における役割と腸内細菌による免疫調節の分子機構の解明を目指している。 前年度までに、盲腸リンパ節のB細胞はパイエル板に比べて、IgAよりもIgG2bを高発現し、特に、腸内細菌結合性IgG2b抗体の産生能が高いことを示した。本年度は、盲腸リンパ節のB細胞がIgG2bを高発現する機序を詳細に明らかにするため、クラススイッチ関連遺伝子の解析を行った。その結果、盲腸リンパ節ではパイエル板に比べてIgG2bへのクラススイッチの誘導能が高いことを遺伝子レベルで確認した。次に、IgG2bクラススイッチを起こすB細胞の特徴について検討するため、GALTのB細胞のIgG2b発現と胚中心B細胞の細胞表面分子の発現パターンを解析した。その結果、パイエル板と盲腸リンパ節では、胚中心B細胞に加え、それ以外のB画分においてもIgAおよびIgG2b発現が検出された。パイエル板におけるIgAクラススイッチは主に胚中心内で起こるが、胚中心外で起こる機序も報告されており、それと同様に、盲腸リンパ節のIgG2bクラススイッチが胚中心外においても誘導される可能性が示唆された。 また、前年度に行った盲腸リンパ節を介した腸内細菌結合性IgG2b抗体産生を誘導する腸内細菌の同定において、抗生物質投与マウスを用いた解析では腸内細菌の多様性が低下する問題が生じたため、今年度は異なる3社のブリーダーから購入したBALB/cマウスを用いて、盲腸内細菌叢と抗体産生応答の解析を行った。盲腸リンパ節におけるIgG2b+ B細胞数と血液中IgG2b量がブリーダー間で異なり、このパターンと相関するいくつかの腸内細菌を属レベルで候補として同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「盲腸リンパ節において産生されるIgG抗体の腸内細菌結合性の評価」のうち、ELISPOT法の解析においてもELISA法の結果と同様の傾向を示す結果を得ることができた。また、当初の予定に加えて、盲腸リンパ節においてIgG2b抗体を高産生する機序について解析を行い、盲腸リンパ節では、IgG2bクラススイッチ関連遺伝子の高発現や、胚中心外におけるクラススイッチの機序の可能性についての知見を得ることができた。これらの結果は、前年度までの結果と併せて、論文に発表することができた(Journal of Immunology Research誌, in press)。 また、「盲腸リンパ節によるIgG抗体産生を誘導する腸内細菌の同定」について、抗生物質投与マウスの解析からは、腸内細菌種の候補を十分に絞ることができなかったため、異なる3社のブリーダーから購入したマウスを用いて解析を行い、盲腸リンパ節におけるIgG2b+ B細胞数と血液中IgG2b量に相関する腸内細菌の候補をいくつか同定した。 一方、当初計画していた盲腸切除の実験および濾胞性樹状細胞の解析はコロナ禍における研究環境の諸制限および麻酔薬の調達遅れ等の影響により検討実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
盲腸部分切除マウスを作製し、血液中IgG2b抗体産生に及ぼす影響を解析する。小腸と大腸のGALTから濾胞性樹状細胞の分離について条件検討を進める。「盲腸リンパ節によるIgG抗体産生を誘導する腸内細菌の同定」については、候補の腸内細菌のノトバイオートマウスを作製し、候補の細菌の抗体誘導能を評価する。機能性食品としてフラクトオリゴ糖を選択し、盲腸を介したIgG2b産生への影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における試薬等納入の遅れや研究環境の諸制限により、研究体制を十分に整えることができなかったため、当初予定していた盲腸部分切除マウスの解析および濾胞樹状細胞の解析に遅れが生じている。繰り越しの予算は同研究内容において、実験動物およびELISA法の解析のために使用する。
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