本研究では、糖尿病性認知症の予防改善に寄与する食品成分とその作用機構の解明を行なった。最終年度では、これまでに明らかにしてきた黒大豆ポリフェノールの認知症予防効果の作用機構の解明を行なった。その結果、黒大豆ポリフェノールの認知症予防効果は、海馬におけるミクログリアの活性化とTauタンパク質の蓄積を予防し、炎症マーカーの発現を予防していることがわかった。また、興味深いことに、黒大豆ポリフェノールのこれらの効果は、摂取を中止したあと3ヶ月間は持続していることも判った。しかし、長期間の試験期間では、老齢による影響が強く出るために、普通食郡と高脂肪食(糖尿病)群との間での差は認められなかった。次に、黒大豆ポリフェノール中の活性成分の探索を実施した。その結果、黒大豆種皮に含まれる主要な化合物のうち、シアニジン3グルコシドが脳のミクログリア活性の予防に強く寄与することが判った。さらに、シアニジン3グルコシドの代謝物であるプロトカテク酸が活性本体であることを示唆する結果を得た。プロトカテク酸は、高脂肪食に含まれるパルミチン酸が誘導する脳内炎症を予防し、その作用機構はIκBαのユビキチン化を抑制することでNF-kBの発現を予防し、炎症を抑制しているという作用機構が関与していることを明らかにした。以上のことから、黒大豆種皮ポリフェノールは、脳内炎症誘導を予防することで認知症を予防する食品成分となりうる成果を得た。
|