研究課題/領域番号 |
20K05930
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研究機関 | 青森大学 |
研究代表者 |
福井 雅之 青森大学, 薬学部, 教授 (60392502)
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研究分担者 |
金光 兵衛 青森大学, 薬学部, 教授 (00265084)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | TRAIL受容体 / Bel-2ファミリータンパク質 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
TRAIL(Tumor Necrosis Factor-related apoptosis-inducing ligand)は、がん細胞特異的に細胞死を誘導できることから、副作用のないがん治療への利用が期待できるサイトカインである。しかしながらTRAILに対して抵抗性を示す癌細胞は多く存在する。本研究は、そのようなTRAIL抵抗性を示す癌細胞のTRAIL抵抗性を減弱し、TRAILによる治療効果を増強させる手段を探索する。研究代表者らは、不飽和脂肪酸(PUFA: polyunsaturated fatty acid)やビタミンがカスパーゼ8の活性化を上昇させ、細胞死を誘導することを過去に報告した。そこで、本研究では、ビタミンやPUFAがTRAIL感受性を上昇させることを確認し、その感受性誘導機構を明らかとする。ヒト癌細胞由来の培養細胞株を用いて、PUFAがTRAIL感受性を上昇させることを確認した。現在、その感受性誘導機構を明らかにするために、ビタミンやPUFA処理により発現量が変化するアポトーシス関連分子を遺伝子発現レベル、タンパク質発現レベルで探索中である。進行途中であるが現時点で、いくつかの受容体とBcl-2ファミリータンパク質の発現量に変化がある事が明らかになってきた。ただし、ビタミンやPUFA処理により誘導されるTRAIL感受性上昇の程度は細胞株によって異なることもわかってきた。今後、どのようなメカニズムによりビタミンやPUFAがBcl-2ファミリータンパク質の発現調整を行っているのかを明らかすることによって、TRAIL感受性を誘導できる癌細胞の特徴を同定することが可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始後に、新型コロナウイルス感染が拡大し、本学においてもしばしば全学生の自宅待機措置が取り決められ、長期間研究が中断した。今後も学生の自宅待機となる措置が取られることが予期されるため、当初、先に行う予定であった動物実験は後ろ倒しとし、2021年度から2022年度に実施を予定していたIn Vitro実験を先に実施している。 現在、がん培養細胞を用いでTRAIL感受性に関わると予測される受容体、細胞内シグナル分子、アポトーシス誘導因子などの発現レベルを遺伝子レベル、タンパク質レベルで解析中であり、いくつかのターゲットとなり得る分子の同定も進んできている。このように、In vitroでの実験は順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果から、PUFAやビタミン成分によりTRAIL感受性の上昇が誘導可能であることが判明してきたが、その応答は癌細胞の種類により異なることもわかってきた。今後、PUFAやビタミン成分がどのようにBcl-2ファミリータンパク質の発現調整を行っているのか、そのシグナル伝達機構を詳細に解析していく。また、これによりPUFAやビタミン成分によりTRAIL感受性を誘導できる癌細胞と誘導できない癌細胞の違いを明らかにすることができれば、癌細胞の特徴によって効果的な治療方針の立案を提供できるようになると期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の研究施設移動により一時研究の実施が留まった。残額は次年度の助成金とともに実験試薬の購入等の物品の購入に充てる。
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