研究課題/領域番号 |
20K05934
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永塚 貴弘 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30445895)
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研究分担者 |
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
伊藤 隼哉 東北大学, 農学研究科, 助教 (50781647)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 過酸化脂質 / テロメラーゼ / 癌 |
研究実績の概要 |
癌が進展するためには、癌細胞の発生(発癌)後の増殖過程において劣悪な環境(低酸素、低栄養など)に適応し、様々な悪性形質を獲得することが重要である。酸化を受けた脂質(過酸化脂質)による発癌の研究例は複数存在するが、癌の悪性化に与える影響についてはほとんど検証されていない。そこで令和2年度は、癌細胞に無限の増殖能を与え、腫瘍の悪性度と極めて高く相関する酵素テロメラーゼに着目し、過酸化脂質のテロメラーゼ活性に与える影響を培養細胞試験により評価した。また、過酸化脂質による癌の増悪化の分子メカニズムを解析した。 過酸化脂質を大腸癌細胞(HCT116)に添加すると、HCT116の細胞増殖が促進された。他の癌細胞(乳癌細胞MCF-7や膵臓癌細胞PANC-1など)でも同様に増殖促進効果が観察されたことから、過酸化脂質は様々な癌細胞種の増殖を促進することが示唆された。過酸化脂質(10μM)を培地に添加してHCT116を培養した結果、テロメラーゼ活性が約2倍に増大した。テロメラーゼ触媒サブユニット(hTERT)の発現をウエスタンブロットとリアルタイムPCRで解析したところ、過酸化脂質処理によってhTERTの遺伝子発現が誘導された。したがって、過酸化脂質は転写レベルでテロメラーゼを活性化させることが示された。この分子機構として、過酸化脂質がMAPK経路の誘導を介してテロメラーゼの活性を亢進すると考えられた。以上より、過酸化脂質による癌悪性化の分子機構の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過酸化脂質による癌細胞のテロメラーゼ活性化を明らかにし、その分子機構の一端を解明することができたため、順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
癌のモデルとして担癌マウスが良く知られているが、近年、動物愛護の観点から動物実験代替法の開発が進んでいる。ミニ臓器(オルガノイド・スフェロイド)や有精鶏卵を使用した癌モデルはその一例であり、今後の研究では、こうした新規の癌モデルを利活用し、過酸化脂質による影響を評価する。 さらに、このモデルを使って、過酸化脂質による癌の悪性化を抑制する食品成分を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の実験が予想した以上に速やかに進行したため、残額が生じた。この額を令和3年度の評価モデルの構築実験に活用する。
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