研究課題/領域番号 |
20K05939
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
松原 主典 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (90254565)
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研究分担者 |
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗老化 / アミロイド / トランスサイレチン / 食品機能成分 |
研究実績の概要 |
老化促進マウスにおいて発酵食品の摂取が老化を遅らせることから,腸の状態について組織化学的に解析を進めた。その結果,前年度と同様に腸ではコンゴレッド 染色によって強く染まるアミロイドの形成は見られず,発酵食品摂取による染色性の差も明確ではなかったが,若年齢のマウスよりも染色性は高まることは確認された。また,発酵食品摂取によって腸での炎症細胞の浸潤が抑制されており,この炎症抑制作用が腸での各種細胞の機能維持に有益である可能性が示唆された。 腸でのアミロイド形成や変性タンパク質の蓄積を抑制するには,アミロイドの原因タンパク質を安定化させる作用を持つ食品の摂取が有効であると考えられる。そこで,アミロイドを形成するタンパク質の一種で,アルツハイマー病と関連のあるトランスサイレチン(TTR)を安定化させる食品機能成分を老化促進マウスに投与し,その効果を評価した。その結果,脳でのTTR沈着が有意に抑制されることが明らかとなった。また,脳での炎症に深く関わるミクログリアのインフラマソーム 形成を抑制し,ミクログリア活性化による炎症を抑制していることが示された。このことは,TTR沈着によるミクログリアの活性化が,TTRの沈着減少により抑制されることを示唆している。さらにこれらの結果は,行動試験による認知機能試験の結果とも一致したことから,この成分の摂取は体内でTTRを安定化させ,TTRの変性およびアミロイド形成を抑制し,加齢に伴う各種臓器の機能低下抑制に有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
加齢に伴い腸での不溶性タンパク質が増加するデータが得られ,それが炎症と関連することが明らかとなった。また,腸での不溶性タンパク質の増加と脳での炎症との関連性も明らかになった。さらに,腸でアミロイが形成されていなくても,脳ではアミロイドに近い不溶性タンパク質の強い沈着が起こり,それがミクログリアの活性化を引き起こすことが示された。一方,発酵食品の摂取により腸での炎症は抑制されることが明らかとなった。さらに,アミロイド形成タンパク質を安定化させる作用のある食品機能成分の摂取により,脳でのタンパク質沈着が抑制されるとともに,脳での炎症も抑制され,加齢に伴う認知機能低下を抑制することが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
発酵食品およびTTR安定化作用のある食品機能成分について検討を進め,腸や脳でのアミロイド形成(変性タンパク質蓄積)抑制効果と加齢に伴う各種臓器の機能低下抑制効果との関係を明らかにする。また,その作用機序についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により学会等がオンライン開催となったため,予定していた旅費を使用する必要性がなくなり残額が生じた。これは次年度の試薬代等に使用する予定である。
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