アミロイド病患者では,大腸においてペプチドYY(PYY)・ソマトスタチン・セロトニンを産生する腸管内分泌細胞(EEC)に変化が起きることが報告されている。そこで,発酵微生物および発酵食品を投与した老化促進マウスSAMP8の大腸について検討を行った。その結果,マウスの老化度評価で抗老化効果を示した発酵微生物では,PYY産生細胞数とセロトニン産生細胞数が対照群よりも有意に多いという結果になったが,投与量を10倍にした場合には有意差が認められなかった。また,外観上,明確な抗老化効果を示さなかった発酵食品については,PYY産生細胞数とセロトニン産生細胞数は対照群との間に有意な差は認められなかった。一方,脳機能等で抗老化効果を示す発酵微生物の場合,PYY産生細胞数が対照群よりも有意に多いが,セロトニン産生細胞数は対照群よりも有意に少ないという結果になった。これらの結果から,発酵微生物摂取による抗老化効果には,EECの中でもPYY産生細胞数の維持が重要である可能性が示唆された。また,アミロイド病患者の腸管ではセロトニン産生細胞が健常者よりも多くなる傾向があることから,発酵微生物の摂取によるセロトニン産生細胞数の増加抑制も重要な作用だと考えられる。加えて,抗老化効果を示した発酵微生物では,腸管のサイズ(直径)が対照群よりも小さいという結果も得られた。これは,腸管細胞の加齢による変化を抑制したことによる可能性がある。 以上の結果から,発酵微生物の摂取は腸管でのECCの加齢に伴う変化を抑制し,それが腸管などの機能を維持し,個体の老化進行が抑制されるという作用機序が推察される。
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