研究課題
近年、疫学研究の発展により、血中ビタミンD濃度と炎症性腸疾患の悪性度が逆相関することが報告されている。このことは血中ビタミンD濃度を改善することが炎症性腸疾患の予防や治療に効果的であることを示唆している。しかしながら、炎症性腸疾患に対するビタミンD投与研究では、効果があったとする報告がある一方、効果は限定的あるいはほとんど効果がないという報告も多数あり、炎症性腸疾患に対するビタミンD摂取の有効性ははっきりと結論付けられていない。食事より摂取されたビタミンDは小腸で吸収されるため、炎症性腸疾患患部まで到達しない。このことが、炎症性腸疾患に対するビタミンD摂取の有効性がはっきりしない原因の1つではないかと仮説を立て、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)飲水投与による誘導性大腸炎モデルに対し、ビタミンDを注腸投与し炎症状態を大腸(盲腸から結腸)の長さで評価する実験系を考案した。初めに、実験系の構築を行った。様々な条件を検討したところ、8週齢マウス、2% DSS飲水投与、生理的濃度ビタミンDをDSS飲水投与後、24時間、72時間で投与、DSS飲水投与後100時間で解析という系を構築した。続いて、ビタミンD投与に対する評価を行った。PBS注腸投与群では、大腸の長さはDSS飲水投与により有意に短くなったが、ビタミンD注腸投与群では、大腸長の短縮が抑制されていた。大腸の長さは、炎症により短くなることが知られているため、ビタミンD注腸投与群では、DSS飲水投与による大腸炎症が抑制されていると考えられた。同様の実験を経口投与で行った。PBS経口投与群、ビタミンD経口投与群のいずれにおいても大腸長は有意に短縮しており、大腸の炎症は抑制されていないと判断した。以上の結果より、大腸炎症の抑制は、ビタミンDが直接的に作用することが肝要であり、ビタミンDは炎症性腸疾患の治療薬となり得ると結論した。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
ビタミン
巻: 98 ページ: 18-20
J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo).
巻: 69 ページ: 90-97
10.3177/jnsv.69.90.
J Steroid Biochem Mol Biol.
巻: 230 ページ: 106275
10.1016/j.jsbmb.2023.106275.
Sci Rep.
巻: 13 ページ: 18528
10.1038/s41598-023-45594-2.