今後の研究の推進方策 |
2021年度までの研究でオレガノをはじめとする食品の匂い成分がもたらす適塩効果の様々な性質が明らかになり,そのメカニズム解析の体制が整い,一部では成果が得られ始めている. 2022年度は定量PCRによる脳内のナトリウム調節系に対するにおい成分の関与について明確にしてゆきたい.すなわち,アンジオテンシンⅡ受容体,オキシトシンおよびその受容体,心房性ナトリウム利尿ペプチド及びその受容体などのmRNA量を定量PCRの手法で明らかにしたい.また アルドステロンなどのステロイドホルモンの定量をElisa で行う予定である. さらに免疫組織化学的手法を用い,体液の浸透圧の中心的な監視装置である感覚性脳室周囲器官(sCVOs) 脳弓下器官 (SFO), SFOにある細胞集団から連絡を受ける特定の脳領域である 終盤血管器官(OVLT), 正中視索前野 (MnPO), 室傍核 (PVN), 視索上核 (SON),(Matsuda et al.2017 Nat Neurosci 20, 2, 230) さらに塩味嗜好と嗅覚刺激のいずれにも深い関連のある扁桃体内側核(MeA), 扁桃体中心核 (CeA), 分界条床核,など体液中の電解質調節に関与する脳領域と塩味の嗜好発現に関する領域に着目し,塩味摂取と匂い提示によりFos 発現が変化する部位を明らかにする.雌雄差の観点からはオキシトシン受容体の性差が確認されたMnPO(Sharma et al. 2019 Plos One 14, 7)に注目して研究を進める予定である.さらにAGRP神経により嗅覚経路と行動的誘因に関与することが明らかになった視床室傍核(PVA)や視床下部弓状核(Horio et al.2021 Nature 592, 8, 262) にも着目し,食品の匂いによる適塩作用の発生メカニズムの全貌に迫りたい.
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