本研究では,植物の病原体ストレス抵抗性に着目し,その優れた環境適応能力を支える細胞内膜交通系の分子実態と制御機構について明らかにする。膜交通系は,細胞膜上の環境シグナル受容体・伝達因子や輸送体の機能制御に重要な役割を果たす。病原体抵抗性においては,細胞壁の強化が重要であり,膜交通系はその一翼を担っている。本研究では特に,膜局在型ユビキチンリガーゼによる膜交通因子の機能制御に注目,ユビキチンシグナルの果たす役割について,新たな視点で解析を実施する。主に,下記3研究課題に関する詳細な解析を効率的に実施する。 1.病原体ストレスに応じたユビキチンリガーゼ活性の変動制御機構の解析 2. 細胞壁成分の輸送に関わる構成因子と積荷の解析 3. 鍵因子機能改変株を用いた病原体抵抗性解析 ユビキチンシグナルでは,標的因子にユビキチンを付加するユビキチンリガーゼに加えて,ユビキチンを除去する脱ユビキチン化酵素の機能が重要である。当該年度は,TGN/EEに局在する膜交通制御因子のユビキチン化について,それに関わる脱ユビキチン化酵素について解析した。また,この酵素が標的にするタンパク質について,TurboIDを用いた解析に取組んだ。これに必要な形質転換体を作出し,MS解析を行った。その結果,複数の新規標的候補が得られた。また,病原体感染シグナルに応じた膜交通制御因子のユビキチン化変動について解析し,こうしたシグナルが病原体感染時の初期応答に関与する可能性が示唆された。
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