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2021 年度 実施状況報告書

重力応答時の力学的最適化に働く細胞壁ホメオスタシス機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K05950
研究機関筑波大学

研究代表者

岩井 宏暁  筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30375430)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード重力屈性 / 細胞壁 / 細胞壁構造タンパク質
研究実績の概要

植物が陸上に進出する時、重力に対抗して自らの体を支えられるため、植物は細胞壁を発達させることで解決して来た。このプロセスの中で、植物が自らの姿勢 を正常に維持するための情報源として利用して来たのが「重力」である。申請者は現在までの成果として、ペクチン、ヘミセルロース、細胞壁構造タンパク質を 改変したイネのライブラリーを作成しており、そこから重力屈性が変化したイネの同定を試みた。40種以上の細胞壁改変イネライブラリーから探索した結果、倒 伏させた状態から回復する角度を調査した結果、β-キシロシダーゼ過剰発現イネで約46%、ガラクタナーゼ過剰発現イネで約11%高く、β-キシラナーゼ過剰発現 イネでは約10%低いことが明らかとなった。また、アラビノフラノシダーゼ過剰発現イネでは、遅延は起こるが最終的に野生型と同じ角度に回復することが示さ れた。特にキシランが減少し、セルロースが増加したラインでは重力屈性が向上しており、これは重力応答機能における「細胞壁ホメオスタシス」の存在を示唆 するものである。重力屈性に重要な機能を持つことが示唆されたスレオニンハイドロキシリッチプロテイン(THRGP)のノックダウン株において、重力屈性に必須なオーキシンに対する応答機能を探索するため、種々の阻害剤を投与した時の、THRGPの屈曲部での動態について調査を行なった。その結果、オーキシン輸送阻害剤NPA処理区で、重力応答に関する回旋転頭運動の異常が見られた。今後も、さらに解析を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

細胞壁構造タンパク質を改変したイネのライブラリーから、重力に関連したものをスクリーニングすることに成功し、新規性の高いスレオニン ハイドロキシリッチプロテイン(THRGP)が、重力屈性およびオーキシン応答に重要であることを示唆する結果を得た。今後、さらにこれらについて解析を行う予定である。

今後の研究の推進方策

現在までに得られた重力応答関連の細胞壁について、改変イネを用いてその機能の解明を進めるとともに、さらなるスクリーニングを行う。本研究結果をもと に、早い段階で論文発表としてまとめる予定である。

次年度使用額が生じた理由

投稿中の論文が、当該年度中に受理までには至らなかったため、次年度使用が生じた。投稿料および追加実験の費用として計上する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Virtual issue: cell wall functions in plant growth and environmental responses2021

    • 著者名/発表者名
      Iwai Hiroaki
    • 雑誌名

      Journal of Plant Research

      巻: 134 ページ: 1155~1158

    • DOI

      10.1007/s10265-021-01351-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural Alteration of Rice Pectin Affects Cell Wall Mechanical Strength and Pathogenicity of the Rice Blast Fungus Under Weak Light Conditions2021

    • 著者名/発表者名
      Ohara Takashi、Takeuchi Haruki、Sato Junya、Nakamura Atsuko、Ichikawa Hiroaki、Yokoyama Ryusuke、Nishitani Kazuhiko、Minami Eiichi、Satoh Shinobu、Iwai Hiroaki
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 62 ページ: 641~649

    • DOI

      10.1093/pcp/pcab019

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rice Putative Pectin Methyltransferase Gene OsPMT10 Is Required for Maintaining the Cell Wall Properties of Pistil Transmitting Tissues via Pectin Modification2021

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa Kazuya、Kamada Shihomi、Takehara Shohei、Takeuchi Haruki、Nakamura Atsuko、Satoh Shinobu、Iwai Hiroaki
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 62 ページ: 1902~1911

    • DOI

      10.1093/pcp/pcab078

    • 査読あり
  • [学会発表] 環境ストレス応答における植物細胞壁ペクチンの機能2022

    • 著者名/発表者名
      岩井 宏暁
    • 学会等名
      第133回 日本森林学会大会  生理部門企画シンポジウム「動的な細胞壁」
    • 招待講演
  • [学会発表] 塩ストレス条件下の早期果実形成過程における細胞壁の変化2021

    • 著者名/発表者名
      矢野朱華; 板野愛都; 宮越茜里; 佐藤忍; 岩井 宏暁
    • 学会等名
      日本植物学会第85回大会
  • [学会発表] 根の伸長におけるイネ細胞壁タンパク質 THRGP の機能解析2021

    • 著者名/発表者名
      木田朋宏; 大場裕介; 渡辺朝美; 宮下彩; 中村敦子; 佐藤忍; 岩井 宏暁
    • 学会等名
      日本植物学会第85回大会
  • [学会発表] 塩ストレス条件下でのトマト成熟果実における維管束構築の変化2021

    • 著者名/発表者名
      小坂友紀; 高橋玲奈; 杉山晴香; 沼尻侑子; 宇賀優作; 佐藤忍; 岩井 宏暁
    • 学会等名
      日本植物学会第85回大会

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公開日: 2022-12-28  

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