研究課題/領域番号 |
20K05951
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鶴田 文憲 筑波大学, 生命環境系, 助教 (30571450)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ミクログリア / 神経細胞 / シナプス / FAT3 |
研究実績の概要 |
出生後の神経細胞は様々な刺激に応答しながらシナプスを形成し、機能的な神経回路を構築していく。この過程において、ミクログリアは活性化していないシナプスを取り除くことで(シナプス刈り込み)、神経回路形成に貢献している。先行研究において、神経活動とシナプス刈り込みの関連性が提唱されてきたが、詳細な分子メカニズムは明らかとなっていなかった。 これまで申請者らは、ミクログリア形態の制御因子をin vitro培養系で探索し、非定型カドヘリンFat3の同定に成功した(Okajima et al. eNeuro 2020)。また予備的ながら、Fat3がin vivoではシナプスと類似の発現パターンを示すこと、さらにミクログリアに発現するFat3が自身の形態変化に関わることを見出してきた。これらの結果から、Fat3は神経細胞とミクログリアの両方に発現し、発達過程におけるシナプス形成、特に未熟なシナプス刈り込みに関わる新規因子になるのではないかと考えた。本研究課題では、シナプス形成におけるFAT3の役割について明らかにすることを目的とした。 当該年度は、当初の目的「神経細胞FAT3はシナプス形成に必要か?」という疑問に対し、FAT3KOマウス脳の凍結切片や初代神経細胞を用いて検証を進めてきた。その結果、FAT3KOマウスでは興奮性シナプス、抑制性シナプス両方のシナプス数が減少することがわかった。さらにこれら現象が細胞自律的か検証するため、FAT3KOマウスから神経細胞を単離し、in vitro培養系においてシナプスアッセイを行った。その結果、初代培養神経細胞においてもFAT3KO神経細胞では、シナプスの数が減少していた。以上の結果から、神経細胞に発現するFAT3がシナプス形成に必要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、神経細胞ならびにミクログリアFAT3のシナプス形成に対する機能解明を目的としている。当該年度は、FAT3KOマウスや初代神経細胞を用いた実験系で検証し、神経細胞FAT3がシナプス形成に必要であることを見出した。また、予備的ながら、行動実験のデータも立ち上げており、FAT3KOマウスが、野生型と比べ、行動異常を示すことが観察できた。これらの成果から、当該年度は提案した内容に対し、概ね順調に進展させることができたと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、主にミクログリアに発現したFAT3の機能解析を中心に行なっていく。具体的には、パニング法を用いた初代ミクログリア培養系を立ち上げ、FAT3KOマウス脳からミクログリアを単離し、初代神経細胞と共培養することで、シナプス形成におけるミクログリアFAT3の機能を明らかにしていく。これら結果を統合し、神経細胞-ミクログリアのシナプス形成に対する重要性を解明していく。
|