研究実績の概要 |
前年度に構築したレポーター遺伝子を用いてペプチジルtRNAの解析を行った結果、翻訳中のtRNAの他に、レポーター遺伝子中に存在しないコドンを解読するtRNA(Cys,Ile2)についても割合は低いが有意に検出された。この事実は、無細胞翻訳系における誤翻訳頻度の高さを示唆しており、この実験系を用いることの妥当性に関わる問題を示した。しかし、シーケンシングに起因する問題によることも考えられたため、大腸菌の全tRNAを高純度に単離精製し、それらを等量混ぜたサンプルを調整し同様の次世代シークエンス解析を行った。その結果、tRNA種によってそのシーケンシング効率は0.6-6倍のバイアスがあることが判明した。これを利用してバイアスを補正した結果、tRNA(Cys,Ile2)の割合が非常に低いことが分かり、実験系の妥当性が確証された。バイアス補正後、tRNAプール内の相対量を考慮して各アイソデコーダーtRNAのコドン解読効率を解析した。U3コドン(コドン3文字目がUのコドン)とC3コドンでは、G34-tRNA(34位がGのtRNA)とcmo5U34tRNAの解読効率の差がコドン種によって大きく異なり、それぞれ1.5-12.5倍、4-9倍程度G34-tRNAの方が大きいことが分かった。G3コドンについては、C34tRNAと修飾U34tRNAとの競合になるが、cmo5U34tRNAの効率がC34tRNAに対し0.25-0.5倍と低いのに対し、xm5修飾UtRNAの効率は高く、C34tRNAと同程度あるいはそれ以上であることが分かった。また、この解析と並行して、翻訳初期に脱落したペプチジルtRNAについても、全tRNA種を単離精製し、そのペプチド配列から脱落箇所のコドンを特定した結果、アイソデコーダーtRNA間のコドン解読効率について上の翻訳中tRNAと同様の結果を得ることができた。
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