研究実績の概要 |
植物の分化成長に関わるこれらFNGsの機能解明研究の一環として,小胞体中にGN1-FNGs,GN1-FNGsが存在していることを明らかにし,これらFNGsのシャペロン様活性やタンパク質凝集阻害活性が小胞体中でのタンパク質品質管理機構に関与している可能性を見いだしている。しかしながら,これらHMT-FNGsが小胞体中に存在するか否かについては,別な分析観点からの検証が必要である。その検証の1つとして aPNGase やαフコシダーゼを欠損させた変異植物にもGN2-PCT-FNGs, GN1-PCT-FNGsが存在することを明らかにしたが,GN2-PCT-FNGsについてはc-PNGaseによるアーティファクトである可能性も考えられた。そこで,令和5年度には2種aPNGase とcPNGaseをトリプルノックアウトした A.thalian変異株を作成し,FNGsの構造解析を行った。その結果,PNGase活性を完全欠損させた変異株においても0.10 nmol/gのGN2-PCT-FNGsが生成していることが確認されるとともに,GN1-PCT-FNGsも検出された。この結果は,小胞体中に存在すると推定しているHMT-FNGsがゴルジ装置を経由して細胞外に分泌されていることを示すものであり,GN-, GN2-HMT-FNGs が小胞体中に存在することを改めて証明する結果となった。 一方,FNGs のシグナル分子機能を考える上では,レセプターキナーゼ (RK)の存在が想定されるので, FNGsを多価カップリングさせた人工糖鎖ポリマーも用いて,トマト果実から HMT-FNGsに特異的に結合する2種タンパク質の分離に成功した。N-末端配列分析から既知のトマトレクチンとは異なる分子であることが明らかとなり,新たな糖鎖結合タンパク質を見いだした可能性がある。
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