研究課題/領域番号 |
20K05961
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
クロフツ 尚子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 研究員 (30583330)
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研究分担者 |
森田 隆太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30866075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / 葉鞘 / 澱粉 / アミロペクチン / アミロース / 枝切り酵素 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、3種類のイネ澱粉枝作り酵素(Branching Enzyme; BEI, BEIIa, BEIIb)の 各組織における役割とその相補作用を明確にすることである。3種類のBEは、組織による発現 強度・相互作用する酵素・好む基質の構造・形成する枝の長さが異なる。我々はこれまで、 二つのBEを欠失させることで、残り一つとなったBEに着目し、イネ胚乳におけるBEの機能と相補作用を明確にしてきた。その過程でBEIIaとBEIIbが欠失すると極めて不稔性が強いことが判明したが、胚乳以外の組織におけるBEアイソザイムの機能と相補作用は不明である。 本研究では、イネBE欠損変異体の花粉・葉身・葉鞘の澱粉構造や澱粉特性および植物体の生育を詳細に分析する。特定のBEが欠失すると、他の酵素がどのように相補するのか、それにより、どのような構造の澱粉を蓄積し、植物体にどのような影響を与えるか明確にする。 2020年度はパーコール法による葉鞘の澱粉精製方法を確立し、野生型・シングル変異体(be1, be2a, be2b)・二重変異体(be1 be2bとbe1 be2a)の葉鞘澱粉を精製した。精製澱粉を枝切り処理し、キャピラリー電気泳動法で分析した結果、be2aとbe1 be2a変異体は野生型よりもDP 6-15が減少し、DP 16以上の長鎖が減少した。その増減の程度はbe2aよりもbe1 be2aの方が大きかった。また、葉鞘澱粉のアミロース含量を測定したところ、野生型が22%であったのに対し、be2aは37%be1 be2aは30%といずれもアミロース含量が大幅に増加した。一方、be1 be2bの葉身澱粉は野生型と同様であり、アミロース含量は15%と低アミロースであった。これらのことから、葉鞘澱粉の合成にはBEIIaが重要な働きをしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葉鞘の精製澱粉を精製し、澱粉構造とアミロース含量を明らかにすることができたから。 また、BEIIaとBEIIbは極めて不稔性が高いが、be2a be2b二重変異体の単離に成功したから。
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今後の研究の推進方策 |
BEシングル変異体および二重変異体の葉身澱粉の精製を行い、葉身澱粉の澱粉構造とアミロース含量を明らかにする。 また、2020年度に単離に成功したbe2a be2b二重変異体の葉鞘澱粉の構造とアミロース含量も明確にする。さらに、その他の澱粉生合成関連酵素にどのように影響しているかを明確にするために、各酵素の発現量や活性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地で参加を予定していた学会が、新型コロナ感染症の感染拡大により、オンライン開催になったため。 今年度予定している学会参加費に充てる。
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