研究実績の概要 |
植物の根毛は,通常,チューブ状にまっすぐ伸びた形態をしている.この形態形成の分子機構について,我々は,「根毛は,まず,PI(4,5)P2による根毛先端の成長とPI(3,5)P2による根毛側面の締め付けによって形成され,また,PI(3,5)P2特異的に根毛側面に,二次細胞壁成分が分泌されることで,形態が維持され,側面は,ジェット機のタイヤより硬い,8 MPaほどの硬さを持つ.」と示してきた. 本研究の目的は,この根毛の形態と硬さは,FAB1がメジャー分子として2つの機能;「二次細胞壁成分を輸送するオルガネラである後期エンドソームのアイデンティティであるPI(3,5)P2の生成酵素」と「表層微小管の重合反応の触媒」により形成される,いう仮説の検証にある. 従って,我々は,本研究により,根毛に硬さを与える二次細胞壁成分が細胞膜の外に分泌輸送される機構とこれを担う分子について,SYP123とVAMP727を中心とした,変異体解析,伸長中の根毛における共焦点レーザー顕微鏡や全反射照明蛍光顕微鏡を用いた局在解析,免疫染色,原子間力顕微鏡,タンパク質間相互作用解析,数理モデルなど,多数の解析法を用いて,詳らかに証明した. これにより,「SYP123が,前期エンドソームを経由して細胞膜上のSYP132によって輸送され,根毛側面の細胞膜に局在すると,二次細胞壁成分を乗せた後期エンドソームを輸送するVAMP727が細胞膜上のSYP123と直接コンタクトし,二次細胞壁成分が細胞膜外に分泌される.」という論理が導き出された. また,表層微小管と二次細胞壁成分分泌の両方に異常があるFAB1の変異体と,二次細胞壁成分分泌異常のみで表層微小管が正常であるSYP123,VAMP727の変異体を比べることにより,根毛の形態形成における表層微小管の寄与と二次細胞壁成分分泌の寄与を独立に計算することに成功した.
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