研究課題/領域番号 |
20K05966
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
長野 稔 立命館大学, 生命科学部, 助教 (80598251)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スフィンゴ脂質 / 細胞膜 / ナノドメイン / シロイヌナズナ / 免疫 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞膜ナノドメインが制御する植物免疫経路を特定し、病害抵抗性におけるナノドメインの重要性を明らかにすることである。細胞膜にはスフィンゴ脂質やステロールを主要構成脂質とするナノドメイン領域が点在する。ナノドメインはタンパク質の活性や相互作用を制御することにより、植物免疫を含む多様な生理機能に関与することが示唆されているが、ナノドメインの役割については未だ多くの謎が残されている。これまでに、スフィンゴ脂質の2-ヒドロキシ脂肪酸が植物のナノドメイン形成の鍵となることを見出し、その合成酵素FAH1とFAH2の二重変異体fah1fah2においてナノドメインが減少することを明らかにしている。また、主要な免疫タンパク質がナノドメインに局在することも示している。本年度は、fah1fah2の細胞膜脂質の分析を行うことにより、FAHは細胞膜のスフィンゴ脂質組成には影響を与える一方で、リン脂質など他の脂質の組成には影響を与えないことを示した。また、ナノドメイン可視化シロイヌナズナ系統を用いた顕微鏡観察から、病害応答時にナノドメインが特定の動態を示すことを明らかにした。さらに、免疫受容体の変異体を用いた解析から、病害応答時の動態は受容体依存的であることも明らかにした。また受容体を含む免疫タンパク質とナノドメインの関係を明確にするために、免疫タンパク質とナノドメインの両者を可視化できるシロイヌナズナ系統を複数確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定していた細胞膜の脂質分析や免疫タンパク質の可視化系統の確立だけでなく、病害応答時のナノドメイン動態観察も行うことができた。また、ナノドメイン動態と受容体の関係を示唆するデータも得ており、病害応答時のナノドメインの機能解明が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
病害応答時のナノドメイン動態のメカニズムや生理学的意義の解明に取り組む。また、免疫タンパク質とナノドメインの共局在解析や、病害応答時の動態解析を行うことにより、免疫タンパク質とナノドメインの関係解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は他予算と併用して研究を行ったため、その額が次年度使用額として生じた。ナノドメイン動態のメカニズム解析に必要な各種阻害剤や検出試薬、および病害処理に必要なペプチド等を多数購入する予定である。
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